リファッション アップサイクル・ヤーンでよみがえる服たちの映画専門家レビュー一覧
リファッション アップサイクル・ヤーンでよみがえる服たち
「持続可能な社会にテクノロジーが変える」エシカル・ライフ・シネマ特集の1本。社会を『reFashioned(改めよう)』というヒントを与えてくれる。世界でも有数の人口密集都市であり、地形図が毎年変わるほどゴミの埋立地が増え続けている香港で、衣料廃棄物やプラごみの問題に取り組む起業家たちに密着したドキュメンタリー。古着から水や薬品を使わずに新しい糸を生み出し、ファッション業界に革命を起こしたエドウィン・ケー、子供服の古着を販売しネットワークを作るサラ・ガーナー、ペットボトルのリサイクルに挑戦するエリック・スウィントンなど、循環型経済への移行に取り組む3人に迫る。監督は、香港を拠点に活躍するイギリス出身のジョアンナ・バウワーズ。
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映画監督/脚本家
いまおかしんじ
エドウィン・ケーが犬の散歩をしている。一匹の犬が癌を患っていて抱きかかえながら散歩するのが微笑ましかった。彼はどこにいてもユーモアを忘れない。サラ・ガーナーはバリバリのキャリアウーマン。キレイな人で仕事もできて家庭もある。従業員はみんな彼女を慕っている。エリック・スウィントンはやたら低姿勢。いつも勉強になりますと頭を下げる。イベントで土砂降りの雨。挨拶している人のそばに雨が落ちてくるのがヒヤヒヤした。三人ともちゃんとしすぎてて物足りない。
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文筆家/俳優
睡蓮みどり
ファストファッションが増え、安く買い、飽きたら捨てる社会。そんななかで洋服の未来について考える奮闘する人たちをフィーチャーする。とはいえ本作は基本的にファストファッションがある世界におけるビジネスモデルについての物語であった。安い賃金で奴隷のようにされてきた人たちがいたからこそ、そもそもファストファッションの存在がある(そのことも本作でも多少は触れられているが)。映画としてはプロモーションの域を抜け出していないように感じてしまった。
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映画批評家、都立大助教
須藤健太郎
これは衣料廃棄物についてのドキュメンタリーではなく、香港の3人の起業家の事業を追ったものであり、要するに企業のPR映画である。その点は忘れずにおきたい。HKRITAはファッション・ショーを成功させ、リタイクルはシンガポールへの進出を図るなど、2つの企業は成長物語へと収斂していくが、Vサイクルは物語からこぼれ落ちる。プラごみの回収、低賃金労働の見直しなど、活動も衣服とは関係ない。この企業の存在が映画の輪郭を曖昧にするが、むしろそれが救いである。
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