君は行く先を知らないの映画専門家レビュー一覧

君は行く先を知らない

「人生タクシー」のジャファル・パナヒ監督がプロデューサーを務め、長男のパナー・パナヒが長編デビューを果たしたロードムービー。イラン国境近くを車で旅する4人家族と1匹の犬。何も知らない幼い次男ははしゃいでいるが、この旅にはある目的があった。監督の家族や友人に起きた出来事から触発された物語で、イラン社会の現実と夢を描いていく。第90回アカデミー賞外国語映画賞イラン代表作品「Breath」(英題)のパンテア・パナヒハが一家の母親を、第68回ベルリン国際映画祭コンペティション部門出品作品「Pig」(英題)のモハマド・ハッサン・マージュニが父親を演じる。2021年第74回カンヌ国際映画祭監督週間正式出品作品。2021年第22回東京フィルメックス コンペティション部門出品作品(映画祭タイトル「砂利道」)。
  • 文筆業

    奈々村久生

    狭い車内でひたすらはしゃぎ続ける幼い次男。だが同乗する父親も母親も長男もうるさいとは思っていないようだ。異常なほどの騒音が背景音のごとく馴染んでくる頃、この一家が直面している事態とそれぞれの反応から見えてくる、イラン社会の現状。ロングショットを効果的に使い、遠回しの会話や音で匂わせる演出の奥ゆかしさは、抑圧のメタファーでもある。長男が握っていたハンドルを繰って帰る母親の姿は、家族というものから独立した、一人の女性としての出発のようにも見えた。

  • アダルトビデオ監督

    二村ヒトシ

    笑わせどころは笑えたし俳優もみんな良かったし風景はとにかく綺麗だったけど、なにかもうひとつ……。両親がもっと本当のひどい人間だって設定にしたほうが、長男の動機や次男のキャラが理解しやすくなったんじゃないだろうか。そんなことしたら全然ちがう映画になっちゃうか。僕は「国家と家庭は、同じような毒をもってる」と考えてるんだけど、そんな観念的でのんきなこと言ってられるのは日本が今のところ平和で安全で、僕がこの映画の家族みたいな目には遭っていないからなのだとも思う。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    本作を鑑賞後、父のジャファル・パナヒの新作「熊は、いない」も観たが、傑作で圧倒的に格が違った。息子のパナーの作品は4人家族が車で旅をする設定だ。どうやら長男を国外に逃がす目的らしいが、理由は語られない。まだ幼い次男は、別れも知らず車内ではしゃいでいる。母が音楽に合わせて踊ることが、女性として戒律に触れる要素もあるようだが、そもそもなぜ長男は国を脱出するのか。もし監督に訴えたいメッセージがあるならば、それが映画製作の初期動機のはずで、曖昧にする意図がわからない。

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