岩井俊二 イワイシュンジ

  • 出身地:宮城県
  • 生年月日:1963/01/24

略歴 / Brief history

【日本映画に新風を吹き込む映像作家】宮城県の生まれ。横浜国立大学美術学科在学中から8ミリ映画を作り始め、卒業後にミュージックビデオ演出に携わる。1991年よりテレビドラマの脚本・演出活動を本格的に開始、主に短編深夜枠という比較的自由な環境で異色作を連発し、一部から注目されていた。93年の『ifもしも/打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』は、劇場用映画未経験でのテレビドラマながら、同作で岩井は日本映画監督協会新人賞を受賞。また元々はビデオ向けの中編「Undo」が単館公開されるや連日満員となり、静かに浸透していた人気を知らしめた。映画企画においては企画書代わりに小説を書くこともあり、企画実現後に小説本として発表される。そのうちの1本は「ACRI」の原作となった。95年、ドラマ企画から発展した「LoveLetter」で長編劇映画デビュー。同作はキネマ旬報読者選出ベスト・テン1位など、若者層を中心に圧倒的な支持を受け、過去のテレビドラマや中編作も続々と劇場公開された。長編第2作「スワロウテイル」(96)は賛否両論を受けたが、「四月物語」(98)や映画監督と並行して手がけるビデオ映像など作品量が増すにつれ、一部からの反発も収まっていく。実験的な製作過程をたどり、社会事象的な少年犯罪を扱った「リリイ・シュシュのすべて」(01)の折には“遺作が選べるならばこれにしたい”との旨を発言。続く長編「花とアリス」(04)で前作の裏返し的な少女映画を作ったのちは、現時点(2009年8月)まで長編劇映画の監督作はない。近作は記録映画の「市川崑物語」や、「虹の女神」「ハルフウェイ」のプロデュース、アニメーション「BATON/バトン」の脚本など。【映画監督/映像作家】90年代以降に常態となった異業種監督のうち、ミュージックビデオ出身の若手は映像派の新世代として、一部から歓迎され、一部からは敬遠されるが、岩井俊二はその代表格。ビデオ映像の肯定、デジタル編集の目まぐるしいカット、セオリーを無視した撮影と編集といった特徴は、そのまま岩井が日本映画に持ち込んだものである。しかし「LoveLetter」「四月物語」「花とアリス」に顕著な、照れのないリリシズムは、男性社会で培われた日本映画へ確実に新風を吹き込み、97年のある雑誌は“岩井俊二は少女である”と題した特集を行なった。当初から映画製作への意志を保ち、市川崑・鈴木清順・円谷英二などへの敬愛も表明しつつ、シネフィル的な作家主義にも陥らない。映画のみならずサブカルチャー全般を援用し、“岩井美学”と呼ばれる映像世代ならではの世界を作りあげる、という点で“映像作家”と呼ばれる監督の一人である。

岩井俊二の関連作品 / Related Work

作品情報を見る

  • パーフェクト・シェアハウス

    制作年: 2024
    小説家・桜井亜美による長編監督デビュー作。とあるシェアハウスに住む全盲の女優・凛、元介護士の遣都、動画配信者の翔、女医の芽衣は、動画を配信しながら一見、楽しそうな日々を送っていた。だがある夜、凛への性加害疑惑が勃発。4人の関係は次第にひび割れてゆく。出演は「ABYSS アビス」の佐々木ありさ、「ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー」の濱田龍臣、「このハンバーガー、ピクルス忘れてる。」の平井亜門、「臍帯」の於保佐代子。
  • 花束

    制作年: 2024
    児童養護施設で育った少年少女たちが、ドキュメンタリーとフィクションを交えて自身の記憶の断片を表現する実験的映画。彼らが児童養護施設で過ごした記憶をたどり、奪われた時間、怯え続けた日々のなかで、彼らが望んだもの、その忘れ難い瞬間を演じていく。監督は、自身も孤児院で過ごした経験を持つイラン出身の俳優サヘル・ローズ。出演は、実際に児童養護施設で育った8人の青少年の他、バイオリニストのサラ・オレイン、「箱男」の佐藤浩市。「キリエのうた」監督の岩井俊二が、エグゼクティブプロデューサーを務めた。
  • りりィ 私は泣いています

    制作年: 2023
    2016年に64歳で亡くなった女優・シンガーソングライターのりりィに迫るドキュメンタリー。「ラヂオの時間」などの撮影監督・高間賢治が記録した『りりィ+洋士』による2013~15年のライヴ映像に、りりィと交流のあったゲストのインタビュー映像を追加した劇場版。出演はりりィ、齊藤洋士、「白鍵と黒鍵の間に」の高橋和也、「夜明けまでバス停で」の根岸季衣、1997年のTVドラマ『青い鳥』でりりィと共演した豊川悦司、りりィ出演作「リップヴァンウィンクルの花嫁」の監督・岩井俊二。
  • キリエのうた

    制作年: 2023
    岩井俊二監督が、2023年に解散した“楽器を持たないパンクバンド”「BiSH」のメンバーで、現在はソロとして活動中のアイナ・ジ・エンドを主演に迎えて贈る音楽映画。「スワロウテイル」「リリイ・シュシュのすべて」などで岩井俊二と組んだ小林武史が音楽を担当。本作が初主演となったアイナは歌うことでしか“声”が出せない路上ミュージシャン・キリエを演じ、主題歌を担当したほか、劇中曲6曲を制作した。共演は、岩井組初参加の松村北斗(SixTONES)、「リップヴァンウィンクルの花嫁」の黒木華、「ラストレター」の広瀬すず。石巻、大阪、帯広、東京を舞台に、別れと出逢いを繰り返しながら、4人の人生が交差し、絡み合い、奏でる、13 年におよぶ魂の救済の物語。
    70
  • 世界の終わりから

    制作年: 2023
    「さがす」の伊東蒼主演、「CASSHERN」やハリウッド映画「ラスト・ナイツ」などを手がけてきた紀里谷和明監督によるファンタジー。事故で親を亡くし生きる希望を見出せない高校生のハナの元に、政府の特別機関の男が訪ねてきて、見た夢を教えてほしいと言う。世界を救うため奔走する女子高生ハナを伊東蒼が、政府の特別機関に所属しハナを支える江崎を「猫は逃げた」の毎熊克哉が演じるほか、北村一輝、夏木マリ、映画監督の岩井俊二ら豪華出演陣が集結。
  • ラストレター(2020)

    制作年: 2020
    手紙の行き違いをきっかけに始まる二つの世代の恋愛と、それぞれの心の再生と成長を描くラブストーリー。岩井俊二が初めて出身地・宮城を舞台に物語を作り上げた。裕里は、亡くなった姉の代わりに出席した同窓会で、初恋の相手・鏡史郎と再会するが……。出演者には「マスカレード・ホテル」の松たか子、「ラプラスの魔女」の広瀬すず、「フォルトゥナの瞳」の神木隆之介、「風立ちぬ」の庵野秀明、「天気の子」の森七菜、「マチネの終わりに」の福山雅治など豪華キャストが集結。
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