クシシュトフ・キェシロフスキ

  • 出身地:ポーランド、ワルシャワ
  • 生年月日:1941年6月27日
  • 没年月日:1996年3月13日

略歴 / Brief history

【ドキュメンタリーより出でてリアルな筆致にこだわる異才】ポーランド、ワルシャワの生まれ。幼少期は父の結核療養のため田舎町を転々とした。ロマン・ポランスキー、アンジェイ・ワイダなどを輩出したポーランドの名門・ウッチ国立映画大学に1964年に入学。短編ドキュメンタリー映画の製作からスタートして、73年に初めての劇映画となる短編「地下道」を監督した。ここではドラマ仕立てで撮った映像に手持ちカメラの画を追加し、あえてドキュメンタリー風のスタイルに編集し直したという。その後もドラマとドキュメンタリーの境界線が揺らぐような作品を撮り続け、「初恋」(74)、「ある党員の履歴書」「スタッフ」(75)などの中・短編を経て、76年に長編第1作の「傷跡」を発表。続く長編第2作「アマチュア」(79)は、ごく平凡な労働者の主人公が、子供の成長を記録するために手にした8ミリカメラで次第に映画作りにのめり込んでいき、家庭や職場で軋轢が生じるという物語をドキュメンタリータッチで綴ったものである。同作はモスクワ映画祭でグランプリを獲得し、キェシロフスキの名はポーランド国外にも急激に広まった。87年の「殺人に関する短いフィルム」では、カンヌ映画祭の審査員特別賞と国際批評家賞をダブル受賞。同作はもともと、モーゼの『十戒』をもとに日常生活に潜む希望や孤独、さまざまな愛の形などを描いた全10話のテレビシリーズ『デカローグ』の1編として製作され、それを再編集して劇場公開したもの。翌88年の「愛に関する短いフィルム」も同様の手順を踏んだ作品で、さらに本体である「デカローグ」も全10時間に及ぶ大作として、ヴェネチア映画祭の国際批評家連盟賞を受賞している。【国際的な評価の中での突然の死】その後はフランス資本で「ふたりのベロニカ」(91)、「トリコロール」3部作(93~94)を撮り、前者はカンヌ映画祭の国際批評家連盟賞を受賞。後者のうち「青の愛」はヴェネチア映画祭金獅子賞、「白の愛」はベルリン映画祭監督賞、「赤の愛」はアカデミー賞監督賞にノミネートされるなど、国際舞台での評価はぐんぐん高まっていった。ところが、キェシロフスキは「トリコロール」を最後に映画監督を引退すると表明。演劇学校で新人俳優の指導に当たりながら、若手監督たちに託す連作として、ダンテの『神曲』をモチーフにした3部作の脚本執筆を進めていたが、その途中の96年3月に心臓発作のため急逝した。キェシロフスキの教え子だったマリア・ズマシュ=コチャノヴィチが監督した、生前のキェシロフスキへのインタビュー映像や関係者の証言をまとめたドキュメンタリー映画「スティル・アライヴ」が2005年に製作されている。

クシシュトフ・キェシロフスキの関連作品 / Related Work

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  • 美しき運命の傷痕

    制作年: 2005
    22年前に起こった不幸な出来事で父親を失った三姉妹が、愛の地獄でさ迷い、もがき苦しみながら運命を受け入れて再生する姿を、繊細かつ熱情的に描く。ポーランドの名匠クシシュトフ・キェシロフスキ監督がダンテの『神曲』に着想を得て構想した三部作「天国」「地獄」「煉獄」のうちの「地獄」編に当たる。この遺稿を「ノー・マンズ・ランド」のダニス・タノヴィッチ監督が映像化した。出演は「Mの物語」のエマニュエル・ベアール、「百貨店大百科」のカリン・ヴィアール、「レセ・パセ 自由への通行許可証」のマリー・ジラン。
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  • ヘヴン

    制作年: 2001
    誤爆テロをやってしまった女教師と、刑務官の青年の運命的なラヴ・ストーリー。監督は「ラン・ローラ・ラン」のトム・ティクヴァ。製作は「リプリー」などの監督として知られるアンソニー・ミンゲラほか。脚本は「トリコロール」3部作などの故クシシュトフ・キェシロフスキ(遺稿)とクシシュトフ・ピエシェヴィッチ。撮影は「ラン・ローラ・ラン」のフランク・グリーベ。音楽は「愛の世紀」のアルヴォ・ペルト。美術は「es」のウーリ・ハニシュ。編集は「ラン・ローラ・ラン」のマチルド・ボンフォイ。出演は「ギフト」「ロード・オブ・ザ・リング」のケイト・ブランシェット、「ギフト」のジョヴァンニ・リビージ、「女優マルキーズ」のレモ・ジローネ、「恋の骨折り損」のステファニア・ロッカ、「金色の嘘」のマッティア・スブラジアほか。
  • トリコロール 青の愛

    制作年: 1994
    フランス国旗を構成する三つの色をモチーフにキェシロフスキが監督した「トリコロール」三部作の一作目。監督のクシシュトフ・キェシロフスキは、ポーランド人で、70年代を通じて数多くの短編ドキュメンタリーを手がけ、「アマチュア」、「殺人に関する短いフィルム」、「ふたりのベロニカ」などで国際的名声を得ている。74年の『終わりなし』からポーランドを代表する弁護士にして理論家のクシシュトフ・ピェシェヴィチとの共同脚本作業を始める。製作はマラン・カルミッツ、エグゼクティヴ・プロデューサーはイヴォン・クレン。また音楽のズビグニエフ・プレイスネル、撮影のスワヴォミール・イジャックは、それぞれポーランドで数多くの作品を手がけていて、キェシロフスキとも長年ともに作品を手がけている。出演は、「存在の耐えられない軽さ」、「ポンヌフの恋人」、「ダメージ」の現在フランスを代表する女優ジュリエット・ビノシュ。舞台俳優として高い地位を得ており、ジャック・リヴェット監督の「彼女たちの舞台」で映画俳優としても活躍し始めたブノワ・レジャン。そして脇もエレーヌ・ヴァンサンやエマニュエル・リヴァなどの演技派俳優で固められている。
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  • トリコロール 赤の愛

    制作年: 1994
    ポーランドの監督キェシロフスキがヨーロッパ統合に向けて企画されたフランスの国旗であるトリコロールをモチーフに短期間で製作された三部作の最終編。監督のクシシュトフ・キェシロフスキはTVシリーズ『十戒』、「アマチュア」「殺人に関する短いフィルム」「ふたりのベロニカ」などを手がけ今や、東西冷戦終結後のヨーロッパを象徴するシンボル的な監督となっている。製作はマラン・カルミッツ、音楽にはズビグニエフ・プレイスネル、撮影にはピョートル・ソボシンスキがあたっている。脚本も長年監督と共同で執筆しているクシシュトフ・ピェシェヴィチが担当。出演は、「ふたりのベロニカ」でカンヌ映画祭主演女優賞を獲得したイレーネ・ジャコブ、彼女と出会う年老いた元判事役を「男と女(1966)」「モード家の一夜」「暗殺の森」のジャン・ルイ・トランティニャンが演じている。また映画の後半部では「青の愛」「白の愛」に出演していた俳優たちが勢揃いで登場している。
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  • トリコロール 白の愛

    制作年: 1994
    フランス国旗を構成する三つの色、青、白、赤をモチーフにしたキェシロフスキ監督のトリコロール三部作の二作目。弁護士で理論家でもあるクシシュトフ・ピェシェヴィチが共同脚本。製作はマラン・カルミッツ。撮影はエドヴァルト・クオシンスキ、美術は、ハリナ・ドブロヴォルスカ、クロード・ルノワールが担当。「青の愛」のジュリエット・ビノッシュに続き今回ヒロインを演じるのはジュリー・デルピー。「ゴダールの探偵」「汚れた血」などで注目され近年は、フランス、ポーランド、アメリカなどで国際的に活躍している。もうー人の主役を演じるのは、キェシロフスキ監督にTVシリーズ『十戒・10』でその演技を認められたズビグニエウ・ザマホフスキ。その他、アンジェイ・ワイダの「鉄の男」などに出演しているヤヌーシュ・ガヨスが脇を固めている。
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  • ふたりのベロニカ

    制作年: 1991
    同年同月同日同時刻に、ポーランドとパリで生まれた瓜二つのベロニカという2人の女性の数奇な交流を描く。監督・脚本は「愛に関する短いフィルム」のクシシュトフ・キェシロフスキ、製作はベルナール・P・ギルマン、エグゼクティヴ・プロデューサーはレオナルド・デ・ラ・フェンテ、共同脚本はクシシュトフ・ピェシェヴィチ、撮影はスワヴォミール・イジャック、音楽はズビグニエフ・プレイスネルが担当。91年カンヌ映画祭主演女優賞(イレーネ・ジャコブ)、国際批評家連盟賞受賞。
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