ポン・ジュノ ポンジュノ

  • 出身地:ソウル
  • 生年月日:1969/09/14

略歴 / Brief history

【作家性と商業性を兼ね備えた韓国映画界の若き巨匠】韓国、ソウルの生まれ。延世大学社会学科に進学し、在学中より自主映画を作り始める。16ミリの短編映画「白色人」(94)がシニョン青少年映画祭で奨励賞を受賞したのを機に、本格的に映画製作を学ぶため韓国国立映画アカデミーに入学。プロの映画人を養成すべく設立されたこの教育機関で1年間学び、卒業制作「支離滅裂」(95)が学生映画としては異例のバンクーバー国際映画祭、香港国際映画祭に招待された。11期生としてアカデミー卒業後は映画脚本家から活動を開始し、「ビールが恋人よりいい7つの理由」(96・日本未公開)、「モーテル・カクタス」(97)、「ユリョン」(99)の脚本に参加。そして2001年に「ほえる犬は嚙まない」で長編映画デビューを飾る団地内で起きた子犬失踪事件の顛末をシニカルに描き、香港映画祭の国際批評家連盟賞をはじめ海外の映画祭や評論家から高く評価されるも、興行的には惨敗。その失敗を糧に第2作「殺人の追憶」(03)を発表する。80年代に起きた実際の未解決事件を題材に、当時の韓国社会の歪みを描いた同作はその年最大のヒットを記録し、国内の映画賞を総なめにした。続く3作目「グエムル・漢江の怪物」(06)では、韓国映画史で前例の少ない怪獣映画に挑戦し、韓国歴代動員史上第1位を記録。これにより、興行的にも評価的にも国内でもっとも期待される監督となった。09年には「母なる証明」を発表。長篇作では「殺人の追憶」から連続してキネマ旬報ベスト・テンの2位・3位・2位と入選を果たしている。【社会と個人の関係を描く】「八月のクリスマス」(98)のホ・ジノ、「シュリ」(99)のカン・ジェギュなどに並んで90年代に韓国映画を作新した、いわゆる“386世代”の最若手に属する。鋭い社会意識と乾いたユーモアを提示すると同時に大衆性も兼ね備え、評論家と一般観客の両方から支持、「殺人の追憶」の際には“韓国の黒澤明”と称された。その完璧主義の演出は「ポンテール(ディテールのもじり)」とも呼ばれ、自作の絵コンテにもとづく画面作りには、しばしば漫画的なセンスが見られる。ブラックコメディ、実録犯罪、怪獣パニックなど作品ごとに異なるジャンルに挑戦しつつも、いずれもジャンル的なパターンには収まらない独自の映画へと昇華。その顕著な例が“母性”を猛々しく描いた「母なる証明」と言える。また、初期の頃からの共通するテーマとして“社会対個人”がある。「ほえる犬は?まない」では団地、「殺人の追憶」と「母なる証明」では田舎町、「グエムル」では漢江、オムニバス作品「TOKYO!」(08)での東京の街といった具合に、ある限定された空間を舞台に、そこから発生する人間関係という設定を好んで用い、現実社会を落とし込んだ物語づくりを得意とする。世界三大映画祭での受賞歴こそないものの、キム・ギドク、パク・チャヌクと並んで世界的な知名度を持つ韓国人監督のひとりであり、すでにして若き巨匠の風格を漂わせている。

ポン・ジュノの関連作品 / Related Work

作品情報を見る

  • パラサイト 半地下の家族 モノクロVer.

    制作年: 2019
    第92回アカデミー賞にて史上初めて非英語作品で作品賞を獲得したポン・ジュノ監督作「パラサイト 半地下の家族」のモノクロ版。半地下の家に暮らすキム一家は全員失業中。息子ギウは身分を偽り友人の代理で高台に住む社長家族の元に家庭教師として入り……。「殺人の追憶」「グエムル-漢江の怪物-」「スノーピアサー」に続きポン・ジュノ監督と4度目のタッグとなったソン・ガンホが、裕福なパク社長一家にパラサイトしていくキム一家の父親を演じる。
  • パラサイト 半地下の家族

    制作年: 2019
    第72回カンヌ国際映画祭にて最高賞パルムドールを受賞した、「オクジャ/okja」のポン・ジュノ監督によるブラックコメディ。全員失業中で半地下の部屋に暮らす貧しいキム一家の息子ギウは、友人の代理で高台に住む裕福な家の家庭教師を務めることになり……。仕事がなくても楽観的な父を「タクシー運転手 約束は海を越えて」のソン・ガンホが演じる。第92回アカデミー賞国際長編映画賞(旧・外国語映画賞)、脚本賞、監督賞、作品賞の4冠を韓国映画として初受賞。
    89
  • 海にかかる霧

    制作年: 2014
    不漁に苦しむ漁船の船員たちが、不法移民の密航の仕事に手を染めたことをきっかけに、運命を狂わせて行くサスペンス。「殺人の追憶」のポン・ジュノが脚本と製作を担当し、「殺人の追憶」の脚本家シム・ソンボが初監督に挑戦した。出演は、「哀しき獣」のキム・ユンソク、人気グループ“JYJ”のパク・ユチョン(『会いたい』)。
  • スノーピアサー

    制作年: 2013
    「母なる証明」「殺人の追憶」のポン・ジュノ監督が、フランスのコミック『LE TRANSPERCENEIGE』を映画化。氷河期に突入した近未来、人類唯一の生存場所となった列車内での階級差別に耐え切れなくなった者たちが反乱を起こすSFアクション。貧困層の乗る列車最後尾から革命を企てるリーダーを「キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー」や「アベンジャーズ」でキャプテン・アメリカに扮したクリス・エヴァンスが、列車を作った権力者を「ポロック 2人だけのアトリエ」のエド・ハリスが演じるほか、「エレファント・マン」のジョン・ハート、「殺人の追憶」のソン・ガンホ、「フィクサー」のティルダ・スウィントンら錚々たる俳優陣が集結している。
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  • 3.11 A Sense of Home Films

    制作年: 2011
    東日本大震災後、「朱花の月」の河瀬直美監督の呼び掛けで終結した世界の映像作家21名が、“A Sense of Home”をテーマに3分11秒で製作した短編のオムニバス。監督は、「ブンミおじさんの森」のアピチャッポン・ウィーラセタクン、「四川のうた」のジャ・ジャンクー、「母なる証明」のポン・ジュノ。
  • 母なる証明

    制作年: 2009
    「殺人の追憶」、「グエムル-漢江の怪物-」で知られる韓国の巨匠ポン・ジュノが手掛けたミステリー。無実の罪で殺人犯にされた息子を救うために真相を探る母親の姿を通じて、親子の愛情を描き出す。主演は「純情漫画」などで活躍する韓国の国民的女優キム・ヘジャ。「ブラザーフッド」のウォンビンが5年ぶりにスクリーン復帰。
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