佐藤浩市 サトウコウイチ

  • 出身地:東京都新宿区
  • 生年月日:1960/12/10

略歴 / Brief history

東京都新宿区の生まれ。父は名優・三國連太郎。父と親しかった名匠、稲垣浩と市川崑にあやかって一字ずつを取り“浩市”と名付けられた。多摩芸術学園映画学科を中退後、1980年のNHK『続・続事件/月の景色』で俳優としてデビュー。少女を殺害した自閉症の被告役で、鮮烈な印象を残す。翌81年、蔵原惟繕・深作欣二共同監督の「青春の門」に主人公・伊吹信介役で主演。炭坑町で育った少年が一人前に成長していく過程を熱演し、ブルーリボン賞新人賞を受賞する。深作監督「道頓堀川」82では、父親への反抗心からビリヤードに打ち込む息子を若々しく演じ、相米慎二監督「魚影の群れ」83では、惚れた女のために不向きな漁師稼業に体当たりで臨む青年をリアルに生きた。その後も、橋浦方人監督「蜜月」84では、住む世界の違う恋人と暮らす中で言いようのない虚無を紛らすように執筆に励む作家志望の青年を、井筒和幸監督「犬死せしもの」86では、命知らずの海賊を生き生きと好演。同年の吉田喜重監督「人間の約束」では、父・三國と初共演も果たす。鈴木則文監督「文学賞殺人事件・大いなる助走」89では、筒井康隆原作の毒を凝縮させた破れかぶれの新進作家を快演し、着実に演技に磨きをかけていく。94年は充実の年となり、阪本順治監督「トカレフ」では幼児誘拐殺人犯の秘めたる狂気と残虐さを、不気味なほど静謐な佇まいに光らせ、ヨコハマ映画祭の助演男優賞を獲得。さらに、深作監督「忠臣蔵外伝・四谷怪談」では、妻のお岩を殺め破滅の一途をたどる琵琶弾きの浪士・民谷伊右衛門役を説得力豊かに肉付けし、日本アカデミー賞最優秀主演男優賞などに輝く。その後も、多額の借金を背負い強盗を企てるディスコのオーナー役で負の色気を振りまいた石井隆監督「GONIN」95、人気コミックを森﨑東監督が実写映画化し、三國と父子役で共演した「美味(おい)しんぼ」96、息子の死に苦悩する解剖医の心の闇に肉迫し、ジャパニーズホラー・ブームの先駆けとなった飯田譲治監督「らせん」98などを経て、98年、相米監督と久々にタッグを組む「あ、春」に主演。死んだと聞かされていた父親の突然の帰還にとまどう主人公の心模様を、自ら重ねた年輪をも反映させつつ細やかに演じた。2000年、再び阪本監督と組んだ「顔」では、「トカレフ」から一転、子供を残したまま女房に逃げられるも、妹殺しで逃亡中のヒロインに惚れられるダメ男を妙演。続く、若松節朗監督「ホワイトアウト」では、ダムを占拠した武装集団のリーダーをケレン味たっぷりに力演し、日本アカデミー賞の最優秀助演男優賞を受賞する。同年の「新・仁義なき戦い。」を挟み、4度目の阪本監督作品となる「KT」02では、組織と個人との間で逡巡する自衛官役で“金大中事件”に迫り、ブルーリボン賞主演男優賞に輝いた。01年に急逝した相米監督に代わり、滝田洋二郎監督がメガホンをとった「壬生義士伝」03では、金と命を惜しむ主人公に反発しつつも惹かれる新撰組隊士の二面性を好演し、二度目の日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞。壊れた愛に執着する海の男の未練を生々しく演じた森田芳光監督「海猫」04、大晦日の高級ホテルに身を隠す渦中の議員に扮した三谷幸喜監督「THE有頂天ホテル」06などを経て、根岸吉太郎監督「雪に願うこと」06では、故郷に舞い戻った弟に厳しくも温かく接する、ばんえい競馬の厩舎経営の兄の器の大きさを、野性味豊かに好演する。同作で東京国際映画祭最優秀男優賞、毎日映画コンクール男優主演賞を獲得し、名実ともに日本映画の“顔”となる。以降も、心に傷を負いつつ殺人犯の妹を献身的に守る刑事を真摯に演じた君塚良一監督「誰も守ってくれない」09、大石内蔵助の命を受けた赤穂浪士の生き残りの苦悩を静かに体現した杉田成道監督「最後の忠臣蔵」10などの主演作でシリアスな芝居に磨きがかかる一方、三谷監督「ザ・マジックアワー」08、宮藤官九郎監督「少年メリケンサック」09などでは抜群のコメディセンスも発揮している。テレビドラマもコンスタントに出演を重ね、主な代表作には、NHK『シャツの店』86、『新選組!』04、『クライマーズ・ハイ』05、『風の果て』07、フジテレビ『親愛なる者へ』92、『素晴らしきかな人生』93、『タブロイド』98、『アフリカの夜』99、日本テレビ『横浜心中』94、『恋も2度目なら』95、『天国への階段』02、TBS『高原へいらっしゃい』03、『官僚たちの夏』09、テレビ朝日『警官の血』09、『陽はまた昇る』11、WOWOW『パンドラⅡ・飢餓列島』10などがある。

佐藤浩市の関連作品 / Related Work

作品情報を見る

  • ハッピー☆エンド(2025)

      制作年: 2025
      「いただきます」「夢みる小学校」で教育、農業、食育を描いたオオタヴィン監督が、医療をテーマに生きる喜びを問いかけるドキュメンタリー。自宅で自分らしい生活を送れる治療法「在宅緩和ケア」を選択した5つの家族と、それに寄り添う萬田緑平医師の姿を追う。ナレーションは「Fukushima 50」の佐藤浩市と「ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポ」の室井滋。
    • てっぺんの向こうにあなたがいる

      制作年: 2025
      “女性だけで海外遠征を”を合言葉に女子登攀クラブを設立し、1975年にエベレスト日本女子登山隊の副隊長兼登攀隊長として、 世界最高峰のエベレスト(ネパール名:サガルマータ、 中国名:チョモランマ)の女性世界初登頂に成功した田部井淳子。その後も飽くなき挑戦は続き、生涯で76ヵ国の最高峰・最高地点の登頂を成功。そんな、日本を代表する偉大な女性登山家・田部井淳子の実話をもとに、エベレスト女性初登頂から、晩年の闘病、余命宣告を受けながらも亡くなる直前まで山に登り続けたその勇壮な生涯を壮大なスケールで描く。主演に日本を代表する名女優吉永小百合、監督に吉永と「北のカナリアたち」以来13年ぶりの再タッグとなる阪本順治を迎え、田部井淳子の世界初女性エベレスト登頂という偉業から50周年となる2025年秋に公開予定。
    • 父と僕の終わらない歌

      制作年: 2025
      2016年にYouTubeに投稿された動画をきっかけに、80歳のアルツハイマー型認知症患者がCDデビューを果たしたイギリスの実話を、日本に置き換えて映画化。かつて歌手デビューを夢見た楽器店店主・間宮哲太はある日、アルツハイマー型認知症と診断されるが……。出演は「こんにちは、母さん」の寺尾聰、「雪の花 -ともに在りて-」の松坂桃李。監督は「線は、僕を描く」の小泉徳宏。
    • 花束

      制作年: 2024
      児童養護施設で育った少年少女たちが、ドキュメンタリーとフィクションを交えて自身の記憶の断片を表現する実験的映画。彼らが児童養護施設で過ごした記憶をたどり、奪われた時間、怯え続けた日々のなかで、彼らが望んだもの、その忘れ難い瞬間を演じていく。監督は、自身も孤児院で過ごした経験を持つイラン出身の俳優サヘル・ローズ。出演は、実際に児童養護施設で育った8人の青少年の他、バイオリニストのサラ・オレイン、「箱男」の佐藤浩市。「キリエのうた」監督の岩井俊二が、エグゼクティブプロデューサーを務めた。
    • 明日を綴る写真館

      制作年: 2024
      1966年にデビュー、名バイプレイヤーとして知られる平泉成の初の主演作である人間ドラマ。さびれた写真館を営むカメラマン・鮫島の写真に惹かれ弟子入りした太一は、客と対話を重ね客の心残りや後悔に向き合う鮫島を通し、自分に足りないものに気付いていく。あるた梨沙による同名漫画を、「20歳のソウル」を手がけた秋山純監督が映画化。無口なカメラマン・鮫島を平泉成が、華々しいキャリアを捨て鮫島に弟子入りする太一を男性アイドルグループ『Aぇ! group』のメンバー、佐野晶哉が演じるほか、佐藤浩市、吉瀬美智子、高橋克典、田中健、美保純、赤井英和、黒木瞳、市毛良枝らベテラン俳優陣が共演。
    • 箱男

      制作年: 2024
      ダンボールを頭から被り、一方的に世界を覗き見る“箱男”になろうとする男を描いた安部公房の同名小説を「almost people」の石井岳龍監督が映画化。1997年に製作が決定するもクランク・イン前日に撮影が頓挫していたが、27年越しに実現した。出演は、「GOLDFISH」の永瀬正敏、「モータルコンバット」の浅野忠信、「ひとつの空」の白本彩奈、「せかいのおきく」の佐藤浩市。第74回ベルリン国際映画祭ベルリナーレ・スペシャル部門正式出品作品。