森田芳光 モリタヨシミツ

  • 出身地:東京都渋谷
  • 生年月日:1950/01/25
  • 没年月日:2011/12/20

略歴 / Brief history

【常に実験精神を発揮し続ける新世代“流行監督”】東京都生まれ。ディスクジョッキーを志望して日本大学芸術学部放送学科に入学。日大闘争で混乱する大学では落語研究会に入り、早大シネ研にも参加した。その後、同世代の原將人に刺激を受けて8ミリの自主映画製作を開始。1972年の日大卒業後も特に就職はせず、個人映画の製作・上映活動を精力的に続けた。78年に撮った8ミリ「ライブイン茅ケ崎」が評判となり、これがきっかけで自ら企画を持ち込んだ「の・ようなもの」(81)で商業映画を撮る機会を得る。奇抜な映像や台詞、独特の編集センスが評価され、新世代の登場を印象づける監督デビューを飾った。83年には松田優作主演の「家族ゲーム」を発表。ごく普通の家庭に風変わりな家庭教師がやって来たことから起きる家族の揺らぎをシニカルに描いた異色のホームドラマで、各映画賞を総なめにした。以後も、映像・演出の実験作「ときめきに死す」(84)、薬師丸ひろ子主演の大ヒット作「メイン・テーマ」(84)、再び松田優作と組み文豪・夏目漱石の名作に挑んだ「それから」(85)、人気絶頂のとんねるずを起用したシュールなコメディ「そろばんずく」(86)など、一作ごとにすさまじい触れ幅で多彩なジャンルの作品を連打。自らは製作総指揮と脚本を担当し、新人監督に発表の場を与えたオムニバス「バカヤロー!」シリーズ(88~91)もヒットさせ、時代の寵児とも言える活躍を続けた。しかし、その後は吉本ばななのベストセラー小説の映画化「キッチン」(89)や、タイムスリップがモチーフのSFファンタジー「未来の想い出 LastChristmas」(92)など、作品の完成度と興行の結果が.み合わないケースが増え、90年代前半は、それまでの快進撃が嘘のような沈滞期となってしまう。【時代を挑発するエンターテイナー】96年、4年ぶりの監督作となる「(ハル)」を発表。作品の大半をパソコン通信の字幕が占めるという衰えぬ実験精神を発揮した秀作とし、その後も大ヒットとなった「失楽園」(97)や、現代ミステリーの映画化「39・刑法第三十九条」「黒い家」(99)、「模倣犯」(02)、あるいは向田邦子脚本の名作ドラマのリメイク「阿修羅のごとく」(03)など、新旧のエンターテインメントを自身の解釈で次々と映像化していく。07年には黒澤明の往年の傑作を同じ脚本で忠実にリメイクした初の時代劇「椿三十郎」を発表。製作の形態、取り上げる題材がさまざまに変化しても、常に時代を挑発し、新しいスタイルを模索し続けた。2011年12月20日急性肝不全のため死去。2012年公開の「僕達急行 A列車で行こう」が遺作となった。

森田芳光の関連作品 / Related Work

作品情報を見る

  • の・ようなもの のようなもの

    制作年: 2016
    2011年に急逝した「家族ゲーム」「それから」の森田芳光監督の劇場デビュー作「の・ようなもの」の35年後を描く青春ドラマ。生真面目で冴えない落語家が、落語を捨てのんびりと暮らす兄弟子と出会い、自分らしく生きる楽しさを知っていく。監督は長年、森田組を助監督として支え続けた杉山泰一。出演は「僕達急行 A列車で行こう」の松山ケンイチ、ピエール瀧、「間宮兄弟」の北川景子、塚地武雅、佐々木蔵之介、「の・ようなもの」の伊藤克信、尾藤イサオ、でんでん、「メイン・テーマ」の野村宏伸、「椿三十郎(2007)」の鈴木亮平、「家族ゲーム」の宮川一朗太、「39 刑法第三十九条」の鈴木京香。
    80
  • 僕達急行 A列車で行こう

    制作年: 2011
    「うさぎドロップ」の松山ケンイチと「ワイルド7」の瑛太が鉄道マニアに扮し、恋に仕事に奮闘する姿を描いたコメディ。九州ロケを敢行し、合計20路線80モデルにもおよぶ車両の登場が鉄道映画らしいこだわり。共演は「パレード」の貫地谷しほり、「ALWAYS 三丁目の夕日'64」のピエール瀧。森田芳光監督の遺作。
    80
  • 武士の家計簿

    制作年: 2010
    磯田道史の『武士の家計簿「加賀藩御算用者」の幕末維新』を原作に「わたし出すわ」の森田芳光監督が映画化。江戸時代後期、激動の時代を世間体や時流に惑わされることなく、慎ましくも堅実に生きた武士家族を描く。出演は「ゴールデンスランバー」の堺雅人、「FLOWERS フラワーズ」の仲間由紀恵、「釣りバカ日誌20 ファイナル」の松坂慶子など。2010年11月27日より石川県各劇場にて先行上映。
    70
  • わたし出すわ

    制作年: 2009
    突然、故郷に戻ってきて、旧友たちに理由もなく大金を差し出す女性と、周囲の人間たちの姿を通じて、お金と人間の関係を描く。「(ハル)」以来、13年ぶりとなる森田芳光の完全オリジナル作品。出演は「カムイ外伝」の小雪、「パッチギ! LOVE&PEACE」の井坂俊哉、「接吻」の小池栄子、「劔岳 点の記」の小澤征悦。
    70
  • 椿三十郎(2007)

    制作年: 2007
    黒澤明監督の1962年の同名時代劇をリメイク。浪人・椿三十郎が、上級役人の巨悪を暴こうとする若侍たちを助ける様を痛快に描く。原作は山本周五郎の小説『日日平安』。出演は「県庁の星」の織田裕二、「犯人に告ぐ」の豊川悦司、「デス・ノートの松山ケンイチ。監督は「サウスバウンド」の森田芳光。
  • サウスバウンド(2007)

    制作年: 2007
    元過激派の破天荒な父と母の型破りな生き方と、そんな両親に困惑する子供たちを描くコミカルなファミリードラマ。『空中ブランコ』で直木賞を受賞した奥田英朗の長編小説を、「阿修羅のごとく」の森田芳光監督が脚本・監督。父親役に「愛の流刑地」の豊川悦司、母親役には「狗神」の天海祐希。。その他のキャストに、加藤治子、吉田日出子、松山ケンイチ、北川景子など。
    60