緑魔子 ミドリマコ

  • 出身地:台湾の台北市生まれ、宮崎県児湯郡高鍋町育ち
  • 生年月日:1944/03/26

略歴 / Brief history

日本統治時代の台湾、台北市で生まれ、宮崎県児湯郡高鍋町で育つ。本名・石橋良子(旧姓・小島)。1962年、県立宮崎大宮高校を卒業後に上京。NHK演技研究所に通う間に東映にスカウトされ、渡辺祐介監督「二匹の牝犬」64で女優デビューする。主演の小川真由美とふてぶてしい風俗嬢姉妹を演じて映画をヒットさせ、続いて「悪女」64でも小川と共演し、同年の渡辺監督「牝」では早くも主役をつとめる。か細い体に大きな目が不敵に光る存在感をスクリーンに焼きつけ、この年のブルーリボン賞新人賞を受賞。続いて「おんな番外地・鎖の牝犬」「夜の悪女」65、「夜の牝犬」「あばずれ」「赤い夜光虫」66など非行少女もの、悪女もので人気を博し、「ひも」「かも」「いろ」65といった梅宮辰夫主演の「夜の青春」シリーズでは、チンピラの食い物にされる家出娘を生々しく好演する。これらは当時全盛だったカラーの任俠映画の併映モノクロ作品であることが多く、美しい情念世界に対する都会の吹き溜まりドラマの集大成が、降旗康男監督「非行少女ヨーコ」66だった。新宿のジャズ喫茶をたまり場に睡眠薬遊びにふける家出少女役で主演。60年代半ばの青春像をスクリーンに刻む。同作で石橋蓮司と初めて本格的に共演した。68年にフリーとなって、各社の作品に出演するようになり、ここから独自の魅力の展開が始まる。増村保造監督の大映「大悪党」68では、悪徳弁護士(田宮二郎)を相手に被害者から加害者の立場に居直る娘役。同じ増村監督の「盲獣」69では暗闇の密室に監禁され、倒錯した性の世界に溺れていくモデル。山田洋次監督の松竹「吹けば飛ぶよな男だが」68では、チンピラ(なべおさみ)と心を通わせる純情な家出娘。大島渚監督「帰って来たヨッパライ」68、和田嘉訓監督「銭ゲバ」70、東陽一監督の独立プロ作品「やさしいにっぽん人」71と「日本妖怪伝・サトリ」73などが続き、森﨑東監督「喜劇・女は男のふるさとヨ」71では笑っていても泣き顔に見えるストリッパー・星子役に扮し、お人よしな星子の不器用さの中にガラスのように壊れやすい繊細さ、童女のような愛らしさを印象づける。こうした作品で他に類のない強烈な個性と演技力を見せ、レコード、ヌード写真集も発表。アンダーグラウンド文化の揺籃期に精彩を放って熱狂的な支持を得る。だが映画では特異な脇役として以外に活躍の場が少なくなり、演劇に力を傾注させていく。69年、佐藤信演出の自由劇場『おんなごろしあぶらの地獄』で初舞台を踏む。以降、佐藤らが創設した68/71黒色テント(現・黒テント)に特別出演したほか、蜷川幸雄の現代人劇場と櫻社の公演に参加。公私ともにパートナーだった石橋蓮司と76年に劇団第七病棟を結成し、砂町富士館で唐十郎作『ハーメルンの鼠』を上演する。第七病棟は唐と山崎哲の作品にレパートリーを絞って石橋が演出、既成の劇場ではない場所を選ぶのが特徴だった。その主演女優を常につとめ、浅草常盤座で公演した『ビニールの城』85で紀伊國屋演劇賞個人賞を獲得。第七病棟の活動は、阿佐ヶ谷オデオン座の『湯毛の中のナウシカ』87、谷中柏湯の『オルゴールの墓』92、浅草橋福井中学校の『人さらい』95、水天宮箱崎旧倉庫の『雨の塔』00などと続き、狂気とロマンティズムの色濃い舞台で次第に日常性を失っていく役どころを演じさせては右に出る者がいないと賞される。テレビドラマにもTBS『マコ!愛してるゥ』67など60年代から多数出演。中でも萩原健一主演の日本テレビ『傷だらけの天使』74と、松田優作主演の同局『探偵物語』79へのゲスト出演は、後追い世代のファンを掴む。79年、一人娘の小学校入学を機に、石橋と正式に入籍。この間、久々に映画で本領を見せたのは家出娘、ストリッパー、代議士の妾の三役を演じた井上ひさし原作、須川栄三監督の「日本人のへそ」77。80年代以降は第七病棟と唐十郎、蜷川幸雄の演出作以外の舞台出演は少なく、映画も蔵原惟繕監督「青春の門・自立篇」82、三國連太郎監督「親鸞・白い道」87がある程度。限定した活動がかえって女優としてのステイタスを高めて、半ば神格化された存在となる。石橋があらゆるジャンルに積極的に出演するのと好対照だったが、金田敬監督「青いうた/のど自慢・青春編」06の主人公の祖母役で19年ぶりに映画に復帰。NHK大河ドラマ『風林火山』07、テレビ東京『週刊真木よう子』08と出演を続け、2009年にはあがた森魚の活動を追ったドキュメンタリー「あがた森魚ややデラックス」にも登場。あがたが監督した「僕は天使ぢゃないよ」77、NHK『夢千代日記』81~84で共演してきたふたりのデュエットはライヴ場面のハイライトとなった。11年は中上健次原作、廣木隆一監督の「軽蔑」に出演。伝説の女優の活動再開は、一作ごとに話題を呼んでいる。

緑魔子の関連作品 / Related Work

作品情報を見る

  • 現在地はいづくなりや 映画監督東陽一

    制作年: 2020
    ベルリン国際映画祭銀熊賞受賞作「絵の中のぼくの村」などで知られる映画監督東陽一のドキュメンタリー。本人のインタビューや、東作品で主演を務めた緑魔子、烏丸せつこ、常盤貴子との対談、フィルモグラフィーを通して、作品や東自身について紐解いていく。監督は、ドキュメンタリー『五ノ神の山車 百年先を造る』の児玉健一。
  • STAR SAND 星砂物語

    制作年: 2017
    「戦場のメリークリスマス」の助監督を務め、「明日への遺言」の脚本を担当したロジャー・パルバースが、自作の小説『星砂物語』を自らの監督で映画化。1945年の沖縄。小島で暮らし始めた少女・洋海は、脱走兵の岩淵、アメリカ人のボブと出会うが……。出演は「秘密 THE TOP SECRET」の織田梨沙、「無限の住人」の満島真之介、「追憶」の三浦貴大。主題曲を坂本龍一が担当。2017年6月21日より沖縄・桜坂劇場にて先行公開。
  • いぬむこいり

    制作年: 2016
    鈴木清順監督の「オペレッタ狸御殿」などのプロデューサー片嶋一貴監督作品。小学校教師・梓の家には、軍功を上げた家来の犬がお姫様と結婚するという犬婿伝説が伝わっている。ある日、仕事で問題を起こし、婚約者と大喧嘩した梓は、空からお告げの声を聞く。出演は、「五つ星ツーリスト THE MOVIE 究極の京都旅、ご案内します!!」の有森也実、ジャズパンクバンド・勝手にしやがれの武藤昭平、「戦争と一人の女」の江口のりこ、「The Room」の尚玄、「アジアの純真」の笠井薫明、「半グレvsやくざ」シリーズの山根和馬、「知らない、ふたり」の韓英恵、「さらば あぶない刑事」のベンガル。
  • 軽蔑(2011)

    制作年: 2011
    作家・中上健次の異色ラブストーリーを「雷桜」の廣木隆一監督が映画化。「白夜行」の高良健吾と「吉祥天女」の鈴木杏のW主演により、愛し合うがゆえに引き裂かれていく壮絶な純愛を描く。そのほかの出演は「ジーン・ワルツ」の大森南朋、「雷桜」の忍成修吾、「海炭市叙景」の村上淳、「パートナーズ」の根岸季衣、「GANTZ」の田口トモロヲ。
    60
  • あがた森魚 やや デラックス

    制作年: 2009
    シンガーソングライターあがた森魚が、2008年8月に北海道からスタートした全国67箇所縦断ライブツアーに密着。全国各地で見せる彼の姿を通して、デビュー以来貫いてきた、奔放なあがた的生き方に迫るドキュメンタリー。監督は「半身主義」の竹藤佳世。オウム真理教を追ったドキュメンタリー「A」の森達也が監修。
  • 青いうた のど自慢 青春編

    制作年: 2005
    1999年に公開された井筒和幸監督の「のど自慢」から生まれた新たな物語。青森の中学を卒業したばかりの若者四人の心情が切なく絡み合う青春群像劇。監督は、これが劇場デビューとなる金田敬。出演は、TVドラマ『3年B組金八先生』の濱田岳、冨浦智嗣、寺島咲。
    70