阪本順治 サカモトジュンジ

  • 出身地:大阪府堺市
  • 生年月日:1958/10/01

略歴 / Brief history

【大阪から世界へ、視野を拡大させる骨太の男】大阪府堺市の生まれ。生家の向かいが映画館だったことから、幼少より映画に親しむ。横浜国立大学在学中、石井聰亙監督の「爆裂都市/BURSTCITY」(82)に美術スタッフとして参加、これをきっかけに映画の現場と関わるようになる。その後、川島透監督の「竜二」や井筒和幸監督作品の撮影現場に参加し、助監督、製作担当、脚本などさまざまな経験を積んだ。その一方で大学は中退し、16ミリ、35ミリで自主製作を続けた。時代が昭和から平成に変わった1989年、プロデューサー・荒戸源次郎と組んだデビュー作「どついたるねん」が完成。“浪速のロッキー”と呼ばれた赤井英和の生き様をそのまま描き出したようなボクシング映画は評判を呼び、ブルーリボン賞作品賞やキネマ旬報ベスト・テン第2位など、多数の映画賞を受賞。映画館ではなく、この映画のために作ったドーム型テントでの上映という話題性もあり、華々しいデビューを飾った。この成功により荒戸とのコンビが「鉄拳」(90)、「王手」(91)、「トカレフ」(94)と続く。大阪を舞台とした“新世界三部作”が「ビリケン」(96)で完結したのち、再び脚光を浴びたのが2000年公開の「顔」。初の女性主人公の映画となったこの作品は、キネマ旬報ベスト・テンで評論家・読者選出ともに第1位を獲得したほか各映画賞を独占、この年を代表する作品となった。02年には、韓国の政治家が日本で拉致された“金大中事件”を題材とする「KT」をベルリン国際映画祭に出品。その後も、日本の安全保障の問題を扱ったアクション大作「亡国のイージス」(05)で興行収入20億円のヒット、「闇の子供たち」(08)ではアジアの幼児買春・臓器売買を告発するなど話題作を次々に手がけ、第一線で活躍を続けている。【力強さを基本に、視野を広げる】「どついたるねん」の成功もあって、初期はその路線を受け継ぐ作品が多い。勝負にかける男の生き様を力強い演出で描くスタイルはこの頃に確立。当初はひとつの町や都市を舞台にした物語が多かったが、ロードムービー「傷だらけの天使」(97)あたりから次第に世界観設定を拡大させ、2000年代に入るとエンタテインメントの要素に社会性を取り入れるようになった。その題材も大阪の一人のボクサー物語から始まり祖国防衛論へ、さらに日本を飛び出してアジアの倫理へと広がりを見せ、身の回り半径数メートルの私小説的世界をモチベーションとする作品が流行するなか、徐々にスケールと視野を広げていく骨太な作家として注目されている。

阪本順治の関連作品 / Related Work

作品情報を見る

  • せかいのおきく

    制作年: 2023
    阪本順治が、先進的な循環型社会を実現していた江戸時代を舞台に、オリジナル脚本で贈るモノクロ時代劇。江戸末期を舞台に、貧乏長屋で暮らす、声を失った武家育ちの娘おきくと、社会の最下層で人々の糞尿を売り買いして生きる青年・中次と矢亮の青春物語。出演は「映画 イチケイのカラス」の黒木華、「ホテルアイリス」の寛一郎、「シン・仮面ライダー」の池松壮亮。美術監督として活躍してきた原田満生が発起人となり、気鋭の日本映画製作チームと世界の自然科学研究者が連携し、様々な時代の“良い日”に生きる人々の物語を映画で伝える“YOIHI PROJECT”の劇場映画第1弾。
  • 冬薔薇(ふゆそうび)

    制作年: 2022
    「半世界」の阪本順治監督が主演・伊藤健太郎をイメージして脚本を当て書きした人間ドラマ。ある港町。渡口淳は不良仲間とつるみ、他人から金をせびってはだらだらと暮らしていた。ある日仲間が何者かに襲われ、その犯人像に思いがけない人物が浮かび上がる。堕落した生活を送る淳を伊藤健太郎が、淳の両親を「深夜食堂」の小林薫と「ホテルローヤル」の余貴美子が、不良グループのリーダーを「泣き虫しょったんの奇跡」の永山絢斗が演じ、寄る辺ない者たちの物語を紡ぐ。
  • 弟とアンドロイドと僕

    制作年: 2020
    「顔」「一度も撃ってません」など数々の作品で組んできた阪本順治監督と豊川悦司が贈る人間ドラマ。幼い頃から自分が存在している実感を抱けずにいる孤独なロボット工学者の桐生薫は、”もう一人の僕”である自分と瓜二つのアンドロイドの開発に没頭し……。監督自身の人生観や思索が反映されたオリジナル脚本で、孤独について描く。この世に身の置きどころのないロボット工学者・桐生薫を豊川悦司が、桐生の義理の弟を「デイアンドナイト」の安藤政信が、父親を「凪待ち」の吉澤健が演じる。
  • 一度も撃ってません

    制作年: 2020
    石橋蓮司が「黄昏流星群 星のレストラン」以来18年振りに主演するハードボイルドコメディ。売れない小説家・市川は密かに殺しの依頼を受けては本物のヒットマンに仕事を頼み、その状況を取材していた。そんな彼が、敵のヒットマンから命を狙われてしまう。監督は、「半世界」の阪本順治。脚本は、ドラマ『探偵物語』の丸山昇一。出演は、「団地」の大楠道代、「北の桜守」の岸部一徳、「ふたりの旅路」の桃井かおり。
  • 半世界

    制作年: 2018
    「エルネスト」の阪本順治が、地方都市を舞台に39歳の男3人の友情物語を綴る人間ドラマ。紘は妻子とともに、父から受け継いだ山中の炭焼き窯で製炭をして暮らしている。ある日、中学からの旧友で、自衛隊員として海外派遣されていた瑛介が町に帰ってくる。出演は、「クソ野郎と美しき世界」の稲垣吾郎、「シン・ゴジラ」の長谷川博己、「きらきら眼鏡」の池脇千鶴、「泣き虫しょったんの奇跡」の渋川清彦。
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  • エルネスト

    制作年: 2017
    「湯を沸かすほどの熱い愛」のオダギリジョーが「団地」の阪本順治監督と3度目のタッグを組む伝記ドラマ。キューバ革命戦士チェ・ゲバラの部隊に帯同、ボリビアの軍事政権との戦いで1967年8月に25歳の若さで散った実在の日系人、フレディ前村の生涯を追う。共演は「闇金ウシジマくん ザ・ファイナル」の永山絢斗、キューバ人俳優で写真家でもあるホワン・ミゲル・バレロ・アコスタ、「ゾンビ革命 フアン・オブ・ザ・デッド」のアレクシス・ディアス・デ・ビジェガス。音楽は「八日目の蝉」「ソロモンの偽証」の安川午朗。
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