樋口真嗣 ヒグチシンジ

  • 出身地:東京都
  • 生年月日:1965/09/22

略歴 / Brief history

【特撮映画による70年代大作主義の復興推進者】東京都生まれ。高校時代までを茨城県で過ごす。『帰ってきたウルトラマン』(71)や70年代の邦画大作に影響を受け、「さよならジュピター」(84)の撮影見学時に特撮技術を志望、18歳で「ゴジラ」(84)の特殊造形アルバイトの現場に入る。1985年、庵野秀明が属するアマチュア製作集団・ダイコンフィルムに赴き、自主製作の16ミリ「八岐大蛇の逆襲」の特殊技術監督を担当。ダイコンフィルムはアニメ製作会社・ガイナックスに発展し、樋口もそこで絵コンテ・助監督・演出などを手がけるようになった。特に絵コンテでは、アニメ作品と一般映画特撮場面とを行き来して活躍し、91年、OVの『ミカドロイド』で本格的に特技監督デビュー。「ガメラ・大怪獣空中決戦」(95)を第1作とする金子修介監督の「平成ガメラ」三部作では、次代の日本特撮を担う特技監督として注目を浴びる。92年に共同設立した企画制作会社・ゴンゾを経て、現在はVFXスタジオ・モーターライズに所属。それらを拠点に、アニメーションと劇映画との往還は続いた。2002年にはCGアニメとアイドルの演技を融和した中編「ミニモニ。じゃムービー・お菓子な大冒険!」で監督を担当(ヒグチしんじ名義)。それ以前より作家・福井晴敏と共同で映画プロジェクトを起動させており、05年に戦争映画大作「ローレライ」が完成、これが名実ともに長編初監督作となった。以後、監督作では特技監督を他者に預けるかたちで作品を重ねていく。06年は同名原作の再映画化「日本沈没」を、08年は黒澤明の「隠し砦の三悪人」のリメイク版を監督。いずれも特撮場面を効果的に用いた大作映画であり、以降にも待機作や進行中の作がある。【VFX時代の大作映画監督】山崎貴に並び、特殊効果を駆使した一般映画の演出者として第一線に立つ特撮出身監督。愛好映画3本に「日本沈没」「新幹線大爆破」「太陽を盗んだ男」を挙げ、加えて「ノストラダムスの大予言」を“魂の故郷”と称し、70年代大作主義映画の再来を監督作で志向する。その背景にはまず、特殊効果が必要不可欠な21世紀の娯楽作において、豊富な特撮の知識が重用された面があった。さらに怪獣映画など日本映画に数少ない大作での経験が、大がかりな現場を指揮する才覚や、巨視的な作品世界を成立させるセンスに結実していたという面もある。こうした資質に、(庵野秀明に顕著な)完全オリジナルを放棄した新世代の感性が混ざり合い、前時代回顧的な大作映画が作られてきた。樋口はそこで、影響を受けた作品の精神的リメイクをも実践する。「日本沈没」では「さよならジュピター」や「アルマゲドン」の展開を踏襲し、また「隠し砦の三悪人」では本家の影響を受けたとされる「スター・ウォーズ」を大胆に引用して先祖返りを企んだ。これらの行為は、“ルーカス=スピルバーグ”以後のハリウッド映画とも歩調を合わせるものであり、自身が口にする“とにかく面白い映画”作りの模索はなお続けられていく。

樋口真嗣の関連作品 / Related Work

作品情報を見る

  • 新幹線大爆破(2025)

    制作年: 2025
    高倉健主演、佐藤純彌監督の1975年公開の東映映画を、「シン・ゴジラ」の樋口真嗣監督がメガホンをとり、現代版として新たに映画化。主人公の高市を草彅剛が演じる。
  • カミノフデ ~怪獣たちのいる島~

    制作年: 2024
    「ゴジラ」シリーズや「大怪獣ガメラ」などに参加し怪獣造形の礎を築いた、怪獣造形界のレジェンド・村瀬継蔵が総監督を務めた特撮ファンタジー。特殊美術造形家・時宮健三の孫・朱莉と同級生の卓也は、健三が作ろうとしていた映画の世界に入り込む。村瀬総監督が1970年代に香港・ショウブラザーズに依頼され書き留めたプロットを基にしている。『仮面ライダー』シリーズや「蒲田行進曲」などの美術デザイナー・美術監督の高橋章がオリジナルコンセプトデザインを、数々の特撮映画に造形スタッフとして参加し「狭霧の國」ではメガホンを取った佐藤大介が特撮を、「ゴジラ」シリーズのデザイナー・西川伸司が怪獣ヤマタノオロチのデザインを担当。出演は、子役から活動している鈴木梨央、米津玄師作詞・作曲・プロデュースの『パプリカ』を歌ったFoorinのメンバー、楢原嵩琉ほか。
  • 映画の朝ごはん

      制作年: 2023
      長年にわたり映画やドラマの撮影現場で愛され続けてきた伝説の弁当屋『ポパイ』にフォーカスした異色ドキュメンタリー。ロケ撮影の定番の朝ごはん、ポパイのおにぎり弁当ができるまでの工程や、制作部による影の努力などを、様々なスタッフの証言を交えて映し出す。ナレーションを女優・歌手の小泉今日子が担当。沖田修一、黒沢清、瀬々敬久、樋口真嗣、山下敦弘といった映画監督たち、美術の磯見俊裕、俳優の内藤剛志など映画・ドラマに関わる様々なスタッフが出演。
    • 鯨のレストラン

      制作年: 2023
      「ビハインド・ザ・コーヴ 捕鯨問題の謎に迫る」の八木景子監督が“クジラ”という題材をさらに深く探索するドキュメンタリー。クジラ専門店の大将や国際機関の主要人物らの証言を記録、料理としての魅力だけではなく、環境問題など多角的な視点から鯨を考察する。出演はワシントン条約元事務局長のユージン・ラポワント、NAMMCO(北大西洋海産哺乳動物委員会)事務局長・科学者のジュヌビエーヴ・デスポーテス、「シン・ゴジラ」の樋口真嗣。
    • キリエのうた

      制作年: 2023
      岩井俊二監督が、2023年に解散した“楽器を持たないパンクバンド”「BiSH」のメンバーで、現在はソロとして活動中のアイナ・ジ・エンドを主演に迎えて贈る音楽映画。「スワロウテイル」「リリイ・シュシュのすべて」などで岩井俊二と組んだ小林武史が音楽を担当。本作が初主演となったアイナは歌うことでしか“声”が出せない路上ミュージシャン・キリエを演じ、主題歌を担当したほか、劇中曲6曲を制作した。共演は、岩井組初参加の松村北斗(SixTONES)、「リップヴァンウィンクルの花嫁」の黒木華、「ラストレター」の広瀬すず。石巻、大阪、帯広、東京を舞台に、別れと出逢いを繰り返しながら、4人の人生が交差し、絡み合い、奏でる、13 年におよぶ魂の救済の物語。
      70
    • 仕掛人・藤枝梅安2

      制作年: 2023
      池波正太郎の時代小説『鬼平犯科帳』『剣客商売』とともに人気の高いシリーズを映画化する第一弾。人の命を救う「鍼医」と人を殺める「仕掛人」という二つの顔をもつダークヒーロー・藤枝梅安が、江戸ノアールの世界で活躍する。清濁あわせのむ矛盾した存在・梅安を演じるのは、「必死剣 鳥刺し」「ミッドウェイ」の豊川悦司。相棒の彦次郎を片岡愛之助が演じる。同じく池波原作である「雨の首ふり坂」の大森寿美男が脚本を書き、河毛俊作が監督。2月3日公開の「仕掛人・藤枝梅安」に続く二作目は、一ノ瀬颯、椎名桔平、佐藤浩市らが出演。