えから始まるものでの検索結果

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  •   かつて裏社会で名を馳せた伝説の殺し屋ジョン・ウィックの終わりなき『復讐と報復』の戦いを描いたキアヌ・リーブス主演「ジョン・ウィック」シリーズ。そのシリーズを継ぐ「バレリーナ:The World of John Wick」の日本公開が8月に決定、ティザービジュアルが解禁された。   「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」のアナ・デ・アルマスが、幼い頃に殺された父親の復讐に立ち上がるヒロイン・イヴを演じるほか、ノーマン・リーダスらが参戦。一貫してシリーズを監督してきたチャド・スタエルスキは製作にまわり、監督には「ダイ・ハード4.0」のレン・ワイズマンを起用。そして、キアヌ・リーブス演じるジョン・ウィックをはじめ、イアン・マクシェーン演じるコンチネンタルホテルNYの支配人・ウィンストンや、本作が遺作となるランス・レディックのコンシェルジュ・シャロンなど、お馴染みのキャラクターも登場する。彼らが新たな復讐の女神・イヴの物語にどのように関わっていくかにも注目だ。 解禁となったティザービジュアルには、ジョン・ウィック同様、背中一面をタトゥーで覆い銃を構えるイヴの姿が映し出されている。背中にラテン語で彫られた〈Lux In Tenebris〉の文字は、日本語では〈暗闇の中の光〉という意味。『復讐は伝播する』と添えられたキャッチコピーも含め本作に注目が集まる。   Story 孤児を集めて暗殺者とバレリーナを養成するロシア系犯罪組織:ルスカ・ロマ。裏社会に轟く伝説の殺し屋:ジョン・ウィックを生み出した組織で殺しのテクニックを磨いたイヴは、幼い頃に殺された父親の復讐に立ち上がる。しかし、裏社会の掟を破った彼女の前に、あの伝説の殺し屋が現れる……。   「バレリーナ:The World of John Wick」 監督:レン・ワイズマン 製作:チャド・スタエルスキ 出演:アナ・デ・アルマス、ノーマン・リーダス、アンジェリカ・ヒューストン、ガブリエル・バーン、キアヌ・リーブスほか 提供:木下グループ 配給:キノフィルムズ  2025/アメリカ/原題:From the World of John Wick: Ballerina ®, TM & © 2025 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.
  • 高崎映画祭邦画ベストセレクションに選出された、谷健二監督による「追想ジャーニー」(2022)の第2弾、「追想ジャーニー リエナクト」(2024)が3月21日より「Amazon prime video」「U-NEXT」などにて配信となる。前作と同じく舞台を主人公の人生と捉え、過去と現在の自分が会話しながら、ステージ上で展開する独自の表現方法は今回も健在。演じる松田凌、渡辺いっけいを中心に、新たな追想の旅が始まる。 還暦の脚本家が退行睡眠のよって、30年前の自分に会いに行く! 主人公は次回作の筆が、一向に進まない脚本家の横田雄二(渡辺いっけい)。彼は『退行睡眠 失った記憶を取り戻し、現代人のストレスをなくします』というメールを受け取り、催眠術師による退行睡眠によって、30年前の自分と会いにいく。30歳の雄二(松田凌)は、演劇仲間の峯井(樋口幸平)や中村(福松凜)との舞台公演を控えていたが、初日前日なのに脚本が書き上がらない。そこへ30年後の横田がやってきて、ここが人生の大事なポイントだと話しかける。自分と同じ道を歩むなという横田のアドバイスに従って、雄二は彼の演劇のファンである麻美(新谷ゆづみ)と付き合い始める。その後の雄二は、横田の人生と違った世界線をたどり始める。新たな選択をしたことで、横田は未来を変えることが出来るのか? 違った未来を歩む主人公の、新たな人生の選択とは? 前作「追想ジャーニー」ではスターになるという夢を追い求めながら、48歳になっても売れない役者をやっている主人公が、高校生だった18歳の自分に退行睡眠で会いに行った。二人はいくつかの人生の分岐点へと追想の旅を続け、自分の選択の何がいけなかったのかを話し合いながら検証していった。今回の脚本家・横田雄二も30年前の自分と会うのは同じだが、現在と過去の雄二は60歳と30歳で、前回よりも人生経験を踏んでいる。それだけに大人が若者に考えを押し付ける感じがあった前作よりも、対等な立場で二人の雄二が描かれていく。特に現在の横田が、過去の雄二に麻美と結婚するという、自分が知らない未来を選ばせてからの展開は、二人にとって未知の世界線でドラマが展開していき、彼らは様々な人生の選択を密に話し合って決めていくことになる。 友人への思いが込められた、再会の場面が感動を呼ぶ また今回は横田雄二ひとりだけではなく、峯井と中村という二人の友人が、彼の人生に大きくかかわってくる。若い頃に三人は互いの才能を認め合っていて、特に峯井は自分がメジャーになって雄二の作品を世に広めると約束していた。しかし実際の峯井は、その数年後に病死した。執筆にかかりきりで、峯井の死に目に会えなかったことが横田には今も心残りで、若い雄二に峯井の見舞いに行けと助言する。峯井は自分が横田のために何もできなかったことを申し訳なく思い、病状が悪化しても彼に知らせなかったのだ。この果たせなかった友人との約束が、作品の大きなテーマになっている。現在の横田が死の床にある峯井と会う場面は、演じた渡辺いっけいの熱演もあって感動を呼ぶ名シーンだ。 芝居経験豊富な俳優陣が、舞台と映画の世界を表現! 映画でありながら、舞台上で横田の精神世界を表現しながら彼の人生が語られていくだけに、演じる主演俳優にも舞台経験豊富な手練れが揃った。30歳の雄二を演じるのは、初舞台の『ミュージカル 薄桜鬼』(2012)に初主演し、その後は舞台『刀剣乱舞』シリーズや『進撃の巨人─the Musical─』のリヴァイ役など、数々の舞台で活躍する松田凌。60歳の横田に扮するのは、状況劇場に参加していた若い頃から現在まで多くの舞台に出演し、映画やテレビでも圧倒的な存在感が光る、名バイプレイヤーの渡辺いっけい。また峯井をテレビの『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』(2022)に主演して注目を集め、最近では映画「ネムルバカ」(2025)にも出演している樋口幸平、中村を『ガラパゴス』(2023)や『下剋上球児』(2023)などのテレビドラマで人気を集めた福松凜、麻美を元アイドルグーループ『さくら学院』のメンバーで、現在は女優として活躍する新谷ゆづみが演じている。さらに成長した雄二と麻美の息子・零士役で、ダンス&ボーカルグループ『BUDDiiS』の高尾楓弥が登場するのも見どころだ。 監督は前作に続いて、「映画 政見放送」(2023)でも知られる谷健二が担当。脚本を演劇バトル『演劇ドラフトグランプリ2023』で優勝を果たした劇団『恋のぼり』の作・演出を担当している私オムが、舞台と映像の見せ方を効果的に使って執筆。一瞬で時空を飛び越える演劇の面白さと、演じ手のリアルな人間性を映し出す映画の特性を見事に融合させた作品に仕上げている。 この作品は現在から過去へ人間の体が移動するタイムスリップものとは違い、人生に後悔の念を持つ主人公が、精神世界の中で過去を振り帰っていくことで、これから自分が生きていくための希望を手に入れるのが魅力。その物語のフォーマットと、人生を舞台に見立てた表現方法は、まだまだ続編を作れる可能性があると見た。第1作は売れない役者、今回は執筆に悩む脚本家。とすれば次は、スランプに陥った映画監督あたりが主人公になるのではないか。そんな今後への期待も膨らむ、異色のインナーワールド・エンタテインメントである。 文=金澤誠 制作=キネマ旬報社 https://www.youtube.com/watch?v=CfNgyf1cxCg&t=1s 「追想ジャーニー リエナクト」 ★3⽉21⽇より「Amazon prime video」「U-NEXT」などにて配信 詳細はこちら⇒https://www.journey-movie.net/ 2024年/日本/66分 監督:谷 健二 脚本:私オム 主題歌「表紙絵 -samune-」(岸 洋佑) 出演:松田 凌、樋口幸平、福松 凜、新谷ゆづみ、⾼尾楓弥(BUDDiiS)、宮下貴浩、根本正勝 / 渡辺いっけい © 映画『追想ジャーニー リエナクト』製作委員会
  •   これまで見過ごされてきたアフリカ系アメリカ人監督の秀作を上映する〈アメリカ黒人映画傑作選〉が、4月18日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国で順次開催される。ラインナップはキャスリーン・コリンズ監督「ここではないどこかで」(1982)、ビリー・ウッドベリー監督「小さな心に祝福を」(1984)、ジュリー・ダッシュ監督「海から来た娘たち」(1991)の3本で、すべて日本初公開(「海から来た娘たち」は1993年〈カネボウ国際女性週間〉での上映、および「自由への旅立ち」のタイトルでの放映歴あり)。メインビジュアル2種と明治学院大学教授・斉藤綾子氏のコメントが到着した。       「ここではないどこかで」は、ある女性のひと夏の心の揺れをヴィヴィッドに捉えた物語。製作当時は特別上映のみで一般公開されなかったが、コリンズ監督が46歳で亡くなって約30年後の2014年、リンカーン・センター映画協会が行った〈ブラック・インディペンデント・ムービー〉特集のオープニングに選ばれ、「当時に広く上映されていたら、映画史に名を残しただろう」(映画評論家リチャード・ブロディ)と称えられた。 「小さな心に祝福を」は、失業した男とその家族の困難を描く。ウッドベリー監督は、チャールズ・バーネットら新しい黒人映画を模索したフィルムメーカーのグループ〈L.A.リヴェリオン〉の重要人物だ。映画は厳しい題材ながらもユーモアを含んだ温かな眼差し、全編にわたり奏でられる哀切なサックス、そして約10分間ワンカットの夫婦喧嘩シーンが印象的。 「海から来た娘たち」は、奴隷解放後である20世紀初頭の大西洋沖の島を舞台に、世代の異なる女性たちの物語を詩情豊かに描出。アフリカ系アメリカ人の女性監督による初の劇場公開作であり、2019年にイギリスBBCの〈女性監督による史上最高の映画〉で10位、2022年にSight & Sound誌の〈史上最高の映画ベスト100〉で60位に選出された。ビヨンセのアルバム『レモネード』に影響を与えたことでも知られる。   [caption id="attachment_48027" align="aligncenter" width="850"] 「ここではないどこかで」©1982 Kathleen Collins, Courtesy of Milestone Films and the Kathleen Collins Estate[/caption]   斉藤綾子(明治学院大学教授)コメント 「沈黙が破られるとき」 これは大事件だ!待ちに待った珠玉の黒人監督のフィルムが公開される。 1980年代から90年代初頭に台頭した黒人インディ映画はスパイク・リーだけではない。 キャスリーン・コリンズ、ビリー・ウッドベリー、ジュリー・ダッシュ。 彼らは、わたしたちが今まで目にしたことのなかった黒人女性たちの現実、愛や戸惑い、怒りや傷、歴史やファンタジーを三者三様の作風による独自の魅力に溢れた映像世界で展開する。 LAリベリオンとして知られるチャールズ・バーネットが脚本とカメラを担当したウッドベリーの映像は、例えばジョン・カサヴェテスに近い。 フランスに留学していたコリンズは自己言及的な語りや演出、またカメラの使い方にヌーヴェル・ヴァーグの影響が見られる。 そして、ダッシュはアフリカ系のルーツを模索し、黒人文化や歴史の美学と詩的な語り映像化を試みる。 1980年代初頭のニューヨーク州、1970年代のLA南部ワッツ地区、1902年のアメリカ南部シー諸島を舞台に、堅物の哲学教授がカメラの前で踊るとき、苦しい暮らしの中で妻が失業中の夫に本音で怒りをぶつけるとき、一族の娘が奴隷制の負の歴史ではなく未来を見てと叫ぶとき、沈黙を破る女たちの力強い姿を捉えるカメラのエンパワーメントと映像の真正さにわたしたちは圧倒され、新たな映画に出会えた喜びを味わうのだ。   〈アメリカ黒人映画傑作選〉 提供:マーメイドフィルム 配給:コピアポア・フィルム 公式サイト:blackamericancinema.jp
  • 脱力系女子二人のキレッキレアクション映画「ベイビーわるきゅーれ」シリーズで、一躍その名を知らしめた阪元裕吾監督の最新作、久保史緒里(乃木坂46)と平祐奈がダブル主演する「ネムルバカ」が3月20日(木・祝)から公開される。 「ベイビーわるきゅーれ」を彷彿させる、二人暮らしの女子 大学の女子寮に二人で暮らす後輩の入巣柚実(いりす・ゆみ)と先輩の鯨井(くじらい)ルカ。 柚実は料理が得意で倹約家、冷静なのにちょっと天然。古本屋でバイトをしているが、これといってうちこめることがないのが悩みのタネだ。 先輩のルカはインディーズのロックバンド「ピートモス」のギター・ヴォーカル。音楽に情熱を燃やすが、才能の壁にぶちあたっている。バイトは長続きせず常に金欠状態。が、ライブでファンを魅了し、プロへの夢を抱きつづける先輩ルカを、柚実は憧れ、リスペクトしている。 二人は安い居酒屋で飲んだくれたり、ビデオを見たり、それなりに楽しい毎日を送っている。そんなある日、大手のレコード会社からルカに一本の電話が。二人のモラトリアムな生活に変化が訪れる。 乃木坂46の久保史緒里と平祐奈が初共演 後輩の柚実を演じる久保史緒理は乃木坂46のメンバー。アイドルであることはもちろん、ラジオパーソナリティを務めるなど多彩に活躍している。2023年放送のNHK大河ドラマ『どうする家康』で織田信長の娘・五徳役に抜擢。現役の坂道メンバーで初の大河ドラマ出演を果たし、その演技が好評を博した。一昨年スマッシュヒットしたタイムループ映画「リバー、流れないでよ」(23)でも物語の鍵を握る重要な役を担ったほか、今年2月にはダブル主演映画「誰よりもつよく抱きしめて」が公開されたばかり。 「ネムルバカ」では、きっぱりとした物言いが清々しい一方、無防備な寝顔やぐでんぐでんに酔っ払う姿など、硬軟双方の姿を見せてくれるのが楽しい。 先輩のルカを演じる平祐奈は、是枝裕和監督の映画「奇跡」(11)で俳優デビューし、映画「未成年だけどコドモじゃない」(17)「10万分の1」(20)などで主演を務める実力派。22年公開の「恋は光」で浮世離れした女子大生を演じ、ヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞した。昨年はミュージカル『奇跡の人』で初舞台を踏みヘレン・ケラー役に挑戦。映画では「からかい上手の高木さん」(24)、現在放送中のNHK連続テレビ小説『おむすび』にも出演するなど活躍の場を広げている。今作では、ギター演奏にも挑戦し、ハイトーンヴォイスで熱唱するライブシーンは圧巻である。 「こんな映画が見たい」と思って描かれた原作漫画 原作は、『天国大魔境』などで人気を誇る石黒正数がまだ20代だった、2008年に発表した同名漫画。学生時代、心に渦巻く悶々とした思いを、「こういう邦画が見たい」との思いで漫画に認(したた)めたという。石黒は「ベイビーわるきゅーれ」を見てこう思ったそうだ。 「『ネムルバカ』をこういうふうにしたかったんだよ」と。 これまですべてオリジナル脚本で撮り続けてきた阪元監督にとって「ネムルバカ」は初めての原作もの。自身が映画化することには相当悩んだすえ、「他の作家にやられるくらいなら自分が!」との思いで引き受けたのだという。 監督“らしさ”で原作にリスペクト 久保史緒里扮する柚実は黒髪の長いストレート、平祐奈のルカは金髪。同じ部屋に住む二人の女子がじゃれあう様子や、食べることが好き、意味のありそうでなさそうな日常会話を繰り広げる趣向は、「ベイビーわるきゅーれ」のちさととまひろを彷彿させる。とはいえそれは、元のキャラクターを踏襲している。ゆえに石黒は「ベイビーわるきゅーれ」に強いシンパシーを感じたのかもしれない。 しかーし! 今回、阪元監督は、”ほぼ”、アクション、ヴァイオレンスを封印した。 厳密にいえば、まったくないわけではない。失礼がすぎる言葉の暴力を無遠慮かつ悪びれることなく発した輩に、女子がゲンコツをお見舞いしたる! その程度はある。 柚実のちょっと乱暴(でも結構痛そう)な一面は、阪元監督の原作へのリスペクトと自身のファンへのサービスショットと見た。 阪元裕吾の真骨頂は、“日常を丁寧に描く”ことだ! では、だからといって「ネムルバカ」が阪元作品らしくないかといえば、そんなことはない。 「ベイビーわるきゅーれ」は、ちさととまひろのキャラクターが魅力的であり、二人のゆるくてコミカルなやりとりが丁寧に描かれていたからこそ、超絶なアクションのはじけっぷりに熱狂させられた。 でも、「ネムルバカ」の柚実とルカはふつうの大学生だ。 殺し屋なんて見たことがないわたしたち観客の、リアルな日常と地続きの世界に生きている。平和ではあるけど悩みや葛藤を抱えながら、友人、仲間を思いやる。そして何より、自分が自分らしく生きなきゃ意味がないんだよ!という普遍的な物語をーー叫ぶように言うのはダサいから淡々とーー緻密に、やはり丁寧に紡いでいく。 「ワルキューレ(戦乙女)」とは対極のタイトルの「ネムルバカ」。 血しぶきや肉塊が豪快に飛び散ることはない。代わりにカメラは、ライブで無心に歌うルカの輝く汗、その姿を見つめる柚実の頬を伝う涙を美しくとらえる。 文=川村夕祈子 制作=キネマ旬報社 https://www.youtube.com/watch?v=GVLeoLx6lzY 「ネムルバカ」 3月20日(木・祝)より 新宿ピカデリーほか 全国にて公開 2025年/日本/106分   監督:阪元裕吾 原作:石黒正数 脚本:皐月彩、阪元裕吾 出演:久保史緒里、平祐奈 綱啓永、樋口幸平 / 兎(ロングコートダディ) 儀間陽柄(the dadadadys)、高尾悠希、長谷川大 志田こはく、伊能昌幸、山下徳久 / 水澤紳吾 吉沢悠 配給:ポニーキャニオン ©石黒正数・徳間書店/映画『ネムルバカ』製作委員会 公式HP:https://nemurubaka-movie.com/
  •   「スター・ウォーズ」が完成するまでのジョージ・ルーカスと仲間たちの苦悩と挑戦の日々を鮮やかにグラフィックで描き出したコミック(バンド・デシネ)『ルーカス・ウォーズ』。 本書について山崎貴監督と樋口真嗣監督が熱く語る、『俺たちのスター・ウォーズ』が3月21日(木)20時よりconnectiveにてLIVE配信される。それに合わせて、『キネマ旬報』2024年7月号に掲載された山崎貴監督が『ルーカス・ウォーズ』の魅力を語った記事をWEB初掲載。21日の直前の予習を兼ねてぜひ御覧ください。   「ゴジラ-1.0」 山崎貴監督が語る『ルーカス・ウォーズ』 若き天才たちの群像劇はやっぱり面白い! 13歳で「スター・ウォーズ」と出会い、それが映像の世界に進むきっかけとなったという山崎貴監督。 かつて米アカデミー賞で「スター・ウォーズ」が獲得した賞と同じ視覚効果部門(「ゴジラ-1.0」)を受賞した監督が語る、本書の魅力とは?    取材・構成=岡﨑優子(キネマ旬報2024年7月号掲載) やまざき・たかし/ 1964年生まれ、長野県出身。86年に白組入社。数々の映画やCMでSFXやデジタル合成を手掛け、「ジュブナイル」(00)で監督デビュー。以降、VFXを駆使したエンタテインメント作品を多く発表し、その第一人者として活躍。主な監督作に「リターナー」(02)、「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズ(05、07、12)、「永遠の0」(13)、「DESTINY鎌倉ものがたり」(17)、「アルキメデスの大戦」(19)、「ゴジラ-1.0」など。   このまま映画にできる 宣伝用の帯にも書かせてもらいましたが、本当にこのまま誰かに映画化してもらいたい。それがこの本を読んだあとの一番の感想ですね。今度、「ロッキー」(76)の誕生秘話を描いた映画(“I Play Rocky”)が製作されるらしいじゃないですか。無名俳優だったシルヴェスター・スタローンが自ら書いた脚本を売り込み、スタジオから脚本だけ大金で買い取ると言われても頑として断り、自身の主演にこだわった。その結果、彼が一躍大スターとして成功したのは誰もが知るところですが、同じようにジョージ・ルーカスのこの話も映画にできると思うんです。 そもそも僕は映画の舞台裏について書かれた本やドラマが好きで、とくに映画界を目指すきっかけとなった「スター・ウォーズ」にまつわる逸話は昔からよく知っていました。この本はそれらのエピソードがふんだんに盛り込まれているだけでなく、さらにつっこんだ“秘話”が描かれている。しかもコミックという形でヴィジュアル化されていることもあり、よりリアリティが感じられました。 技術畑出身としては、やはりILM(インダストリアル・ライト&マジック社/ルーカスが「スター・ウォーズ」製作のために設立した特殊効果&VFX制作会社)についてのエピソードが印象的でした。ディズニープラスで配信されているILMの歴史をひもといたドキュメンタリー『ライト&マジック』(全6話/22年)も涙なくしては見られませんでしたが、この本にはそのILMの立ち上げ時のことが描かれていて。彼らも最初は想像以上にポンコツだった(笑)。ルーカスが(スタッフやキャストたちとのさまざまな軋轢を生んだ)ロンドンでのしんどい撮影から数カ月ぶりにILMのあるカリフォルニアに戻ってきたら、並行して進めていたはずの特殊効果制作が惨憺たる状況で。期限の7カ月以内に残り360ショット作れるかと聞くと、(SFX技師の)ジョン・ダイクストラが「まじめにやれば……」と答えるところなんて思わず笑ってしまいました。 大逆転劇のカタルシス 水木しげるさんの伝記をドラマ化した『ゲゲゲの女房』もそうですが、最終的に大成功することが分かっている人の苦労話は本当に面白い。どんなつらい目にあっていても、それがすべて大逆転に向けての伏線になりますからね。ルーカスも自分がワクワクするようなSF映画を作りたくて「スター・ウォーズ」の企画書を書いたものの、主要なスタジオには見向きもされず、唯一興味を示した20世紀フォックスとの“攻防”──主に予算と契約をめぐるやりとり──もすさまじいものがあります。 関係者の誰もがみな映画の成功を信じていない中、ルーカスの友人であるスピルバーグだけがずっと“分かっている”感じも良かったですね。一方、ルーカスは公開直後にスタジオから大ヒットの報せを受けても、「SFファンは初日に駆けつけるものだから」とまだ成功を確信していない。驕らないルーカスらしさが出ています。 映画が大成功した後も、フォックスはオリジナル・サウンドトラックのレコード化を渋り、映画のノベライズを阻む嗅覚のなさ。といっても、当時のスタジオの判断はたぶん正しいのだと思います。なぜなら一握りの成功した作品の陰に、うまくいかなかった作品、消えた企画がいっぱいあるはずだから。 そんな中、ルーカスが大ヒットの恩恵を独占せず、成功を可能にしてくれたスタッフやキャストに利益を分配するくだりが素晴らしい。そして、今まで予算の締め付けや契約の引き延ばしなどでさんざんいじめられたフォックスから続篇を打診された際、「映画の収益分配はこちらが80%、グッズの収益は100%。続篇の権利も芸術的な判断も握る」と啖呵を切る。こんなセリフ、一度言ってみたいものです(笑)。 細部へのこだわり コミックとしてもよく出来ていて、気に入っているシーンやカットもたくさんあります。とくにエピローグのラストカットは爆笑しましたが、それはネタバレになるから実際に読んでもらうとして、やはり細部の描き込みがすごいです。音楽を担当したジョン・ウィリアムズの家の内装とか、「屋根の上のバイオリン弾き」(71)と「JAWS/ジョーズ」(75)で受賞したオスカー像2本がそれらしく飾ってあったりして、よく調べてあるなあと。 キャスティングのシーンも、当時オーディションに参加した有名俳優たちがたくさん登場して面白い。(ハン・ソロ役候補だった)クロストファー・ウォーケンと(レイア姫役の候補だった)ジョディ・フォスターだったらどうなっていたんだろう?と想像してしまいます。あと、(オビ=ワン・ケノービ役の)アレック・ギネスがチュニジアの砂漠でのロケで、初日に衣裳を馴染ませるため、ごろごろと地面に転がって汚したシーンもいい。実は「ゴジラ-1.0」で安藤サクラさんも現場で同じことをやっていて、思わぬ共通点に驚いたりもしました。 宇宙船のデザインに関するエピソード―ミレニアム・ファルコンはハンバーガーと豚ロース肉を合わせた形にしてほしいと注文したとか──がきちんと絵になっているのも心躍りました。ルーカスが描いたというデス・スターやXウィング、タイ・ファイターの初期スケッチも引用されていて、改めて彼は天才だと思いましたね。とくにタイ・ファイターの形状って、なかなか出てこない発想だと思うんですよ。できればそれを具体的な形にしたラルフ・マクォーリー、ストーリーボード作成からイラストレーション、模型製作と何でもやったジョー・ジョンストンにももっとスポットを当ててほしかったですが。 「トキワ荘」のような軌跡 個人的に惹かれるのは、これがルーカス一人の物語にとどまらない群像劇であるということですね。何者でもない若者たちが集まり、奇跡のように「スター・ウォーズ」を創り上げたことが本当に楽しくて。 本書ではさらりと描かれていますが、ルーカスを取り巻く人たちはその後の映画界を担う重要人物ばかり。日本だと、未来の有名漫画家たちが住み集い切磋琢磨した「トキワ荘」みたいな感じというか。タイプは違いますがフランシス・F・コッポラは手塚治虫。そこに若いスピルバーグがいたり、寡黙なルーカスがいたり……。たまたまそこに天才が集まっていたのか、環境が天才たちを生んだのか。とにかく自分でやりたいことに忠実で、その中で映画の歴史が動いた瞬間がある。後々それが伝説になっているのが面白いと思います。 ルーカスと「スター・ウォーズ」をめぐる冒険はこれで終わったわけじゃない。第2作「帝国の逆襲」(80)でさらなる苦労話があるだけに、コミックの続篇にも期待したいです。そして同時に、『ウルトラマン』の誕生物語を描いた昔のドラマではありませんが、やっぱり“「スター・ウォーズ」をつくった男たち”感のある、完璧な映像版も見てみたいですね。   『ルーカス・ウォーズ』 ロラン・オプマン 作、ルノー・ロッシュ 画 原正人 翻訳、河原一久 監修 A4判/ 208頁/書籍 キネマ旬報社刊 4620円(税込) 電子版:2500円(税込) © Éditions Deman 2023 ▶本の購入はコチラから