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「すから始まるもの」の検索結果
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限定的な空間で起きる犯罪パニック映画には傑作が多い。「ダイ・ハード」(88)や「スピード」(94)、「コン・エアー」(97)などはその緻密で緊張感ある演出で無名だった監督の名声を一気に高めた。 2月14日(金)にレンタルが開始される「デッド・エンド 完全封鎖」もその一本に仲間入りするだろう。両端を破壊され完全に孤立した橋の上でテロ集団と戦う主人公を描く本作は、一瞬たりとも気が抜けないスリリングな力作だ。 狡猾なテロリストによる連続トラップ!! 最悪な事態をヒーローは突破できるか? 主人公エリック・ダニエルズ(ディラン・スプラウス)は妹のマデリン(メーガン・ストット)を乗せて、映画を観ようと車を走らせていた。しかし川にかかる大橋の中間点で渋滞に巻き込まれた直後、轟音とともに橋の両端が爆破、通過しようとしていた70人以上が脱出不能の橋の上に取り残される。直後に犯行を宣言した元民間軍事会社の兵士・ロメオ(メイソン・グッディング)は配下を使って橋に取り残されたドライバーたちを拘束、携帯電話を奪い人質にする。その中には重大犯罪の証人として裁判所へ護送中の女性兵士ドク(ディーチェン・ラックマン)もいた。 かつて民間軍事会社のもと戦地で活動していたロメオは、配下に指示し巧みに人質を掌握、橋を包囲する警察を手玉に取る。一方、陸軍特殊部隊にいたエリックは妹の命を守るために行動を始める。だが彼は除隊後、重いPTSDに苦しんでいた──。 物語の中盤、テロ集団がエリックの行く手に立ちはだかる。配下の行動やトラップの緻密な配置、起動のタイミングも絶妙だ。エリックはたった一人で妹を、そして人質たちを救出することができるのか。さらにテロリストの真の目的は何か。この作品の観客は緊張感から開放される瞬間がない。さらにドクの秘密やロメオが服用する薬、エリックのPTSDの原体験などがドラマを重厚にしている。 作品を輝かせたふたりのフレッシュ・スター 何よりディラン・スプラウスとメイソン・グッディングが演ずるヒーローと敵役のキャラクター造形が見事だ。本作は彼らにとってターニング・ポイントの一作になるかもしれない。 ディラン・スプラウスは1999年の映画「ビッグ・ダディ」の子役として注目され、10代、20代と着々とキャリアを積み重ねてきたが、甘いマスクのせいで恋愛コメディやファミリー映画への起用が多かった。本作では一転、男くさい特殊部隊兵士を激しいアクションとともに演じ、俳優として完全に脱皮した。 また、メイソン・グッディングもテレビシリーズ「Love、ヴィクター」(2020~22)やリブート版「スクリーム」(22)で明るい役を演じてきた。クールな悪役ロメオ役は彼にとって新鮮な挑戦だったに違いない。 このイケメン俳優二人の激突が終盤の最大の見所となる。アクションシーンを完璧に演じきった二人が今後、ハリウッド製アクション映画の新星になることを期待したい。マッチョすぎない二枚目のアクションスターはトム・クルーズの再来をも連想させる。また、映画のキーマンとなる護送中の女兵士を演じた、ディーチェン・ラックマンも個性的なキャラクターで強烈なスパイスになった。「ジュラシック・ワールド 新たなる支配者」(22)で印象的なアジア系ミックスルーツを演じた彼女は、本作のキャラクター造形も独特で強い印象を残している。本作はアクション映画として完成度が高いだけでなく、俳優陣もフレッシュで個性的な点で傑出しているのだ。 製作はアカデミー賞受賞作「ハート・ロッカー」のスタッフ 監督のパトリック・ルシエは90年代を映画編集者としてキャリアを積み、ことにホラー・マスター、ウェス・クレイヴン監督の片腕として重用されてきた。本作の緻密な映像設計やアクションの連続は有能な編集者の視点によって生み出されたと言える。 ルシエは2000年に「ゴッド・アーミーⅢ」で監督デビューし、ウェス・クレイヴン製作総指揮の「ドラキュリア」(00)や「ブラッディ・バレンタイン3D」(09)などでホラーマニアから注目され監督作を増やしてゆき、2015年には大作「ターミネーター 新起動/ジェニシス」の製作総指揮、脚本も務めている。 本作は、決して大きな予算の映画とは言えないが、彼の才能を存分に発揮できる場になった。封鎖された橋の上という限定空間を設定することで、ルシエは最小のロケーションで壮大なイメージのアクション空間を作りだした。「ダイ・ハード」や「スピード」も、資金面の難題を克服し大ヒットに結びつけた。本作もその後を追うことを祈りたい。なお、本作の制作会社・ボルテージ・ピクチャーズは独立系ながら2009年にジェレミー・レナー主演「ハート・ロッカー」でアカデミー賞6部門を受賞した経歴がある。それだけにアクション映画も単なるドンパチの連続では終わらせない。「デッド・エンド 完全封鎖」も登場人物たちが経験した戦争の傷を浮かび上がらせことで、原題「Aftermath」=「余波」の意味が立ち現れる仕掛けになっている。 ちなみに映画の舞台となるトービン橋はアメリカ・マサチューセッツ州のミスティック川にかかる実在の橋だ。全長2マイル(約3.2キロ)の長い橋で、独特の形状の美しいアーチリブが印象的だ。1950年に開通した古い橋だけに、破壊にも強いリアリティが感じられるが当然、爆破シーンはCGによるフィクションである。 監督、俳優などフレッシュな才能の共振によって生み出されたこの新たな傑作の誕生を、貴方は見逃してはいけない。 文=藤木TDC 制作=キネマ旬報社 https://www.youtube.com/watch?v=-vd6Of12ZEI 「デッド・エンド 完全封鎖」 ●2月14日(金)レンタルリリース ●2024年/アメリカ/96分 ●監督:パトリック・ルシエ ●脚本:ネイサン・グラハム・デイビス ●出演:ディラン・スプラウス、メイソン・グッディング、ディーチェン・ラックマン、メーガン・ストット ●発売・販売元:プルーク © 2023 AFTERMATH FILM HOLDINGS LLC All Rights Reserved
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「石門」の監督コンビの過去作「卵と石」「フーリッシュ・バード」が公開決定
2025年2月14日女性の性をめぐる作品を発表してきたホアン・ジーと大塚竜治のコンビ。最新作「石門」(2022)の2月28日(金)日本公開を控える中、新たに彼らの第1作「卵と石」(2012)と第2作「フーリッシュ・バード」(2017)を今春にアップリンク吉祥寺ほか全国で順次上映することが決定した。 「卵と石」 中国湖南省の田舎町に暮らす14歳のホングイ。両親は都会で働いているため、もう7年も叔父夫婦のもとに身を寄せ、幼なじみのアジウと会うのを唯一の楽しみとしている。そんなホングイには、ある深刻な悩みがあった……。ホアン・ジー監督が子どもの頃に遭った性被害に基づく、衝撃の物語。第41回ロッテルダム国際映画祭タイガー・アワード受賞。 監督・脚本:ホアン・ジー 撮影・編集:大塚竜治 主演:ヤオ・ホングイ 2012/中国/中国語/ビスタ/1時間45分 ©YELLOW-GREEN PI 「フーリッシュ・バード」 中国湖南省の地方都市に暮らす16歳のリン。母は出稼ぎのため不在で、身を寄せる祖父母の家には居場所がなく、高校ではいじめに遭っている。やがて親友と共に、高校で盗んだスマホを転売して小遣いを稼ぐようになったことで、街の怪しい人々と関わるように……。思春期の《初体験》に焦点を当てた物語で、第67回ベルリン国際映画祭ジェネレーション14+部門スペシャルメンション受賞。 監督・脚本:ホアン・ジー、大塚竜治 編集:リャオ・チンソン、大塚竜治 音楽:リン・チアン 主演:ヤオ・ホングイ 2017/中国/中国語/シネスコ/1時間57分 ©YELLOW-GREEN PI・COOLIE FILMS 〈コメント〉 ホアン・ジー監督 私の母は『卵と石』と『フーリッシュ・バード』を鑑賞した時に、初めて私が中学と高校でどんな困難に直面していたのかを知りました。 そして、母は尋ねました。「どうして私に言わなかったの?」 あなたにも家族や友達に言えない困難がありますか? もしかしたら、『卵と石』や『フーリッシュ・バード』が、あなたと彼らの間にある『石門』を開くかもしれません。 大塚竜治監督 今回『石門』の公開を機に、前作の『卵と石』および『フーリッシュ・バード』が同時公開されることとなり、とても嬉しく思います。映画『卵と石』の制作時に初めてヤオ・ホングイを起用したとき、彼女はまだ13歳でした。第一印象は、彼女の眼差しでした。彼女は、中国の現代社会の波に流されることなく、何か先を見据えた強い意志を持っていました。その眼差しは私たちを惹きつけ、三作品に渡り10年間撮り続けることになりました。今から12年前の『卵と石』、8年前の『フーリッシュ・バード』の時、彼女の視線の先には何が見えていたのだろうか? -
二人のレジェンドに導かれたニューヒーロー誕生「ベスト・キッド:レジェンズ」
2025年2月14日いじめられっ子の転校生ダニエル(ラルフ・マッチオ)が空手の達人ミスター・ミヤギ(ノリユキ・パット・モリタ)の教えを受けながら成長していく姿を描き、大ヒットした「ベスト・キッド」(1984)。続編が第4弾まで作られ、2010年にはジャッキー・チェン(空手ではなくカンフーの達人を演じる)とジェイデン・スミス共演でリメイク、さらに1作目の34年後を描いたスピンオフドラマ『コブラ会』が2018年から配信されている。 そんな人気シリーズの最新作として、ラルフ・マッチオとジャッキー・チェンが競演し、新たに少年を導いていくさまを描いた「ベスト・キッド:レジェンズ」が、今夏に公開される。場面写真とキャストのコメント入り予告編が到着した。 北京でミスター・ハン(ジャッキー・チェン)のカンフー指導を受けていた高校生のリー。家族の不幸を受けてニューヨークに移住するが、周囲に馴染めずいじめられる。そんな中で数少ない友人に助けを求められ、戦うことを決意するが、スキルが十分ではない。 一方でハンは空手の達人ダニエル(ラルフ・マッチオ)を訪ね、ミスター・ミヤギの写真の前で、協力を求める。こうしてリーは、二人のレジェンドからそれぞれ空手とカンフーの極意を授かり、《真のファイター》となって究極の格闘大会に挑むことに──。 オーディションを勝ち抜いてリー役に選ばれたのは、『アメリカン・ボーン・チャイニーズ 僕らの西遊記』(2023)のベン・ウォン。その演技力もアクションも見逃せない。 https://www.youtube.com/watch?v=1TOnDDKIoJU 「ベスト・キッド:レジェンズ」 監督:ジョナサン・エントウィッスル 脚本:ロブ・ライバー 製作:カレン・ローゼンフェルト エグゼクティブ・プロデューサー:ジェニー・ヒンキー、ラルフ・マッチオ 出演:ジャッキー・チェン、ラルフ・マッチオ、ベン・ウォン、ジョシュア・ジャクソン、セイディ・スタンリー、ミンナ・ウェン 原題:Karate Kid: Legends 配給・宣伝:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント 公式サイト:https://www.bestkid-legends.jp -
「ミッドサマー」のフローレンス・ピューと「アメイジング・スパイダーマン」のアンドリュー・ガーフィールドを主演に迎え、「ブルックリン」のジョン・クローリー監督が《限りある時間》の中での愛を紡いだ「We Live in Time この時を生きて」が、6月6日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国で公開される。ポスタービジュアルと予告編が到着した。 新進気鋭のシェフであるアルムート(フローレンス・ピュー)と、離婚して失意に暮れるトビアス(アンドリュー・ガーフィールド)は、あり得ない出会いを果たして恋に落ちる。そして、アルムートは奔放でトビアスは慎重という性格の違いからたびたび試練を迎えながらも、一緒に暮らしていく。やがて娘が誕生して幸せに包まれるが、アルムートが余命わずかだと判明し、彼らは型破りな挑戦をすることに──。 北米配給権をA24が獲得したことでも注目の本作。時制をシャッフルさせて紡ぐ人生讃歌の物語に、心を揺さぶられる。 https://www.youtube.com/watch?v=gBK9YtXN3CA 「We Live in Time この時を生きて」 監督:ジョン・クローリー 出演:フローレンス・ピュー、アンドリュー・ガーフィールド 2024年/フランス・イギリス/英語/108分/カラー/スコープ/5.1ch 字幕翻訳:岩辺いずみ 映倫区分:G 配給:キノフィルムズ 提供:木下グループ © 2024 STUDIOCANAL SAS – CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION 公式サイト:https://www.wlit.jp
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小さな幸せを夢見た一家を、大きな悲劇がのみ込む「1980 僕たちの光州事件」
2025年2月13日民主化を求める市民を軍が鎮圧し、多数の死者を出した光州事件。その痛ましい実態を、ある一家にスポットを当てて描いた「1980 僕たちの光州事件」が、4月4日(金)よりシネマート新宿ほか全国で公開される。ポスタービジュアルが到着した。 1980年5月17日、チョルスの祖父は念願だった中国料理店をオープンさせる。父親はどういうわけか家にいないが、幼なじみのヨンヒや町の優しい人々に祝福され、幸せに包まれていた。そんな一家を、のちに光州事件と呼ばれる悲劇が襲う──。 権力はいかにして庶民のささやかな幸福を奪ったのか? 韓国現代史の闇を、時にユーモアを交えながらも切々と描いた物語に注目したい。 「1980 僕たちの光州事件」 監督・脚本:カン・スンヨン 出演:カン・シニル、キム・ギュリ、ペク・ソンヒョン、ハン・スヨン、ソン・ミンジェ 2024年/韓国/韓国語/99分/シネマスコープ/5.1ch/映倫G 原題:1980 字幕翻訳:本田恵子 字幕監修:秋月望 配給:クロックワークス © 2024 JNC MEDIA GROUP, All Rights Reserved.