佐藤真のレトロスペクティブ開催。アート、パレスチナ、記憶を通じて見つめた彼方とは──

 

稀代のドキュメンタリー作家・佐藤真のレトロスペクティブ〈暮らしの思想 佐藤真 RETROSPECTIVE〉が、5月24日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国で順次開催。ポスタービジュアルと予告編、濱口竜介・深田晃司・三宅唱という3監督の新着コメント、ならびにエドワード・サイードと親交の深かった作家・⼤江健三郎がかつて佐藤監督作品「エドワード・サイード OUT OF PLACE」に寄せたコメントが公開された。

 

 

《⽇常》を撮りながら、そこに潜むもうひとつの世界への⼊り⼝を探し、言葉に絡め取られる前の世界の感触を伝えた佐藤真。2007年に49歳で世を去ってからも、人々に影響を与え続けている。

今回のレトロスペクティブでは、知的障害者と呼ばれる7⼈のアーティストの活動を通して芸術表現の根底に迫った「まひるのほし」(1998)、自閉症を抱えたアーティスト・今村花子と家族の物語「花子」(2001)、パレスチナの窮状を世に伝えて共⽣の地平を探り続けた知識⼈エドワード・サイードの不在を見つめた「エドワード・サイード OUT OF PLACE」(2005)の3作を4Kレストア上映。

さらに、新潟⽔俣病の舞台となった阿賀野川流域に暮らす人々を捉えた長編デビュー作「阿賀に生きる」(1992)、その10年後に残されたものにカメラを向ける「阿賀の記憶」(2004)、孤高の写真家・牛腸茂雄の作品世界に肉薄した「SELF AND OTHERS」(2000)も特別公開する。

 

 

〈コメント〉

エドワード・サイードの「不在」の⾵景のなかを、ゆったりと美しいカメラが、いつまでも追ってゆく。パレスチナ、イスラエルの苦しみのひだひだが照射される。⼈々の⾊濃い思い出を横切るサイード。そしてサイードの「希望」が私らの頭上に現われる。
(「エドワード・サイード OUT OF PLACE」について)
──⼤江健三郎(作家)

佐藤真の映画ではカメラが人物の前に回ることが多い。対立でもなく、対峙でもなく、被写体の前で立ちすくむカメラ。そんな印象を受ける。答えのない過酷な生を、人々の声が和らげる。佐藤真はインタビューすることを恐れない。インタビューの一つ一つが説明に堕することがないのは、人の声自体を「できごと」として捉える感性ゆえだろう。一度お会いしたかった。
──濱口竜介(映画監督)

生きていると佐藤真監督の映画のことを不意に思い出す。阿賀の景色、花子の笑顔、パレスチナの難民たち。それら映像の記憶の断片はノスタルジーから遠く現在と生々しく接続している。
──深田晃司(映画監督)

なぜそう撮ったのか。なぜそう繋いだのか。なにを撮らずにいたのか。なにを撮れなかったのか。あるショットから次のショットへ、そのすべての変化が、新たな発見として、新たな応答として、そして新たな問いとして迫ってくるように受け止めています。自分なりに考えてきたつもりでも、いままた見直すと、まだまだぜんぜん受け止められていないことに気づき、新たな問いばかり見つかります。レトロスペクティヴの開催を嬉しく思っています。
──三宅唱(映画監督)

 

「まひるのほし」 ©1998 「まひるのほし」製作委員会
「花子」 ©2001 シグロ
「エドワード・サイード OUT OF PLACE」 ©2005 シグロ

 

〈暮らしの思想 佐藤真 RETROSPECTIVE〉

配給:ALFAZBET、パラブラ
提供:パラブラ、シグロ、阿賀に生きる製作委員会、太秦、カサマフィルム、ユーロスペース
4Kレストア:ヨコシネDIA
公式サイト:https://alfazbetmovie.com/satomakoto