「愛の勝利(1939)」のストーリー

父の死とともに巨万の財産を受けついだジュディス・トラハーンは、思うままにならぬことは何一つない身分である。そのような気ままの富豪として、彼女はあらゆる贅沢をしていた。しかし乗馬も夜会もジュディスの若々しい青春の血気を満たしてはくれなかった。そんな時、彼女はカクテルのグラスを重ねてみることもあるが、酔って楽しい気分になれるものではなかった。しかしジュディスは富豪令嬢に有りがちの、思いあがった、鼻もちならぬエゴイストではなかった。また男から男へと浮気をして恥としないような女でもなかった。満たされぬ心をもって悩むジュディスは、健康もおもわしからぬことを気づくと、医者の診察を乞うた。彼女を見た医師はフレデリック・スティールという若いけれども、立派な医師である。彼は診察の結果、ジュディスは十か月しが生きられない身体にあることを知る。彼はこの美しい、不幸な患者に心をひかれた。ジュディスも彼に愛ではないかと思う気持ちを感じる。それはダンスの相手のアレックに感じる気持ちとはまるで違ったものであった。また調馬師のアイルランド人マイケルと話するときの気持ちとも別の感情であった。マイケルは身分の違うジュディスが、手の届かない高嶺の花と知りながら、片恋をささげている男である。ジュディスにはその気持ちが分からないではなかったが、彼の愛に報いることのできるものではなかった。フレデリックのジュディスへの感情は、同様ではなく真実の愛であった。愛ゆえに彼はジュディスに彼女の病状の真実を打明けねばならなかった。恐ろしい打撃ではあるが、ジュディスは堪えた。十か月の命!しかし彼女はフレデリックの真実の愛を得た。愛は時間を超越する十か月にしろ真実の愛の生活を持ち得ることは世にも類ない大きな幸福である。ジュディスはこの幸福に生きる喜びに感激するのであった。