「マジック・ランタン・サイクル」のストーリー

〈花火〉暖炉の前に横たわった裸の少年(ケネス・アンガー)が、逞しい水兵(ゴードン・グレイ)に抱かれる自分を夢想しながら自慰行為をしている。だが欲望は満たされず、服を着て出かける。少年の目の前で別の水兵(ビル・セルツァー)が上半身裸になって肉体を誇示し、陶然とした少年をはがい締めにする。少年が水兵に煙草の火をつけてもらうと、水兵の大群が乱入して少年に襲いかかり、服をはぎ取って裸にし、鼻血を出させ、鎖で叩き、体じゅうを傷つけ、しまいには裸の胸を割った瓶で切り裂く。少年の時計仕掛けの心臓が止まる。全裸の少年の骸は多量の精液をかけられて蘇生する。少年が全裸に水兵帽を被って横になっている部屋に、夢の水兵が入って来た。水兵がペニスを取り出すとそれは勃起して花火になる。少年はその光を浴びて恍惚とし、胸からクリスマスツリーを生やす。クリスマスツリーは暖炉で燃え上がる。暖炉の前で、息を荒くした少年と顔が花火になった水兵が裸になっていっしょに寝ている。 〈ラビッツ・ムーン〉森の月夜、白衣のピエロ(アンドレ・スーベイラン)が月の光を浴びて踊っている、月は兎の分身である。月を手にして、兎を直にみたいと夢見るピエロの前にアルルカン(クロード・ルヴナン)が現れ、魔法幻灯を取り出す。幻灯の映し出す光のなかに、コロンビーヌ(ナディーヌ・ヴァランス)が現れる。ピエロはコロンビーヌに恋をする。 〈ルシファー・ライジング〉火山から流れ出る溶岩。エジプトの女神イシス(ミリアム・ギブリル)が火山岩の大地の上で目覚める。立ち上がるイシスに呼応して、古代エジプトの神殿を背に夫であるオシリス神(ドナルド・キャメル)。二人の神の感応のなかでマグス(ケネス・アンガー)が目覚める。映像はマグスの古代エジプトの墓所のようでもあり、現代のアパートのようでもある部屋から飛び立ち、古代エジプトやイギリスの古代文明、荒涼とした岩山などを自在に往来し、神々の交信を映し出す。やがてマグスは床に魔法陣を描き、大魔王ルシファー(レスリー・ハッギンス)を呼び出す儀式を始める。