「カルメン(1983・スペイン)」のストーリー

舞踊団の主宰者アントニオ(アントニオ・ガデス)は、今、ビゼーのオぺラ『カルメン』のミュージカル化に取り組んでいる。しかし、大きな問題をかかえていた。肝心のカルメン女優がみつかっていないのだ。彼は親友であり仕事仲間であるギタリストのパコ(ガデス・デ・ルシア)と共に舞踊学校に新人を見に行った。そこの主宰者クリスティーナ(クリスティーナ・オイヨス)とは長年の友人なのだ。その日も、イメージに合う娘が見つからず、帰ろうとしていた彼らの目が、時間に遅れてやって来た一人の娘に止まった。情熱的な黒い瞳と堂々とした仕草は、まさにカルメンのイメージにぴったりだった。その娘カルメン(ラウラ・デル・ソル)は、その場でヒロインに決まった。やがて、厳しいリハーサルが開始された。予想どおり、カルメンはメキメキと上達していった。やがてアントニオは、役のドン・ホセと同じようにカルメンに惹かれてゆく自分を感じた。二人の踊りの呼吸はぴったりと合い、お互いの体は自然と引き寄せられていった。アントニオの強い愛情を感じたカルメンは、夜一人で稽古する彼を訪れ二人は結ばれた。しかし、カルメンにはヤクザの夫がいた。その夫ファン(ファン・アントニオ・ヒメネス)が、服役を終えて刑務所から出てきた。カルメンに夫を紹介されたアントニオは、嫉妬心に燃えた。ちょうどそのころ、リハーサルでは、カルメンをめぐる闘牛士と盗賊の闘いが展開される。まさに現実のカルメンをめぐるアントニオと夫との対決と錯綜する。カルメンは嫉妬に悩むアントニオにはっきり言った。「私が今好きなのはあなただけ」。しかし、そんなカルメンの言葉とは裏はらに彼女は、平気で浮気をした。独占欲の強いアントニオに「私は束縛されるのは嫌い、自由にさせておいて」と言い放つカルメン。いよいよリハーサルもラストを迎えていた。嫉妬に燃えるアントニオは、遂に彼女を刺してしまった。まるで舞台の『カルメン』さながらに……。