「男・女・妻」のストーリー

ラルフ・ブランドンは親友ジャック・メイスンと共に欧州大戦参加の義勇軍に投じ、愛妻ヘレンを残して出征した。そして突撃隊に加り敵陣へ突進することとなったが、臆病風に誘われて遂に戦地から脱走を企てた。戦が終わった時、戦死を報ぜられたラルフは帰国はしたものの、今更ヘレンの許へも戻ることが出来ず、悶々の情を抑えて、暗黒街を放浪するより外に道がなかった。かつてラルフを恋して容れられなかったリタは、偶然見すぼらしい姿となっているラルフに逢った。リタは今ではこの暗黒街で勢力を張っているワード・ロジャースの囲い者とはなっているが、未だにラルフに対する愛情だけは忘れかねていたのである。リタはロジャースの許を去って、失意のラルフと新しい生活を始めることにした。一方ウルフの死を信じ、絶えず捧げるジャックの愛に動かされたラルフの妻ヘレンが、遂にジャックとの婚約を発表したのは、それから間もなくのことであった。これを知った時にラルフの心は乱れた。しかし、彼にはそれを止める力がなかった。堪えやらずラルフは、リタに胸の苦しみを打ち明けたが、これを聞き知ったのは、折柄廊下を通り合せたロジャースであった。ロジャースはこれを種にヘレンの父から大金を引出すのだとラルフを脅迫した。ラルフは遂にヘレンの身を庇うためにロジャースを射殺し、終身刑の宣告を受ける。が、ラルフを熱愛するリタは一味を語って彼を救い出すのであった。そしてラルフは途中まで脱れては来た。が、思いめぐらせば、今後生き永らえても所詮は甲斐なき我が身であった。そして愛するヘレンのために妨げとなる己れであった。そうだ、彼は思った。ヘレンの幸福のために、せめても犠牲となって尽してやろう。雄々しくも斯く決心したラルフは、追射する機関銃火に自ら飛び込んで死んで行ったのである。