「雑兵物語」のストーリー

戦国時代の荒れ果てた一寒村に二十文の日当で足軽十五人の徴発がきた。うまい話だが頭数を揃えねばと、了海和尚と相談の上、半人前の小男の仙太、大モノグサの弥十、折しも通りかかった茂平を口説き、仙太の女房で体重三十貫、しかも臨月近いおたつ、男おんなの於莵まで男装させ、頭数を揃えた。成立ちからこれだから五郎八と藤七は両軍の勝敗をバクチのタネにする。茂平は味方が危くなると、敵の斥侯になっている隣村の留吉から敵方の旗を手に入れてみんなにつけさせる。拾い物に精出して盗品買いの婆に売りつけるといった調子。この奇妙な連中を使って敵の裏をかき、大切な兵器を居城清州に運ばせようと考えたのは信長だ。極秘だという荷物の中味を覗くとただの黒い鉄の玉。ところがこれが“国崩し”という物すごい爆弾と判ったが、お目付けの益田庄兵衛がいるので逃げるに逃げられず、へっぴり腰で道中がつづいた。清州にたどりつき、明朝を期して砲撃と決ったが、一足さきに故郷へ帰ったはずの仙太夫婦と赤ん坊が敵の城にいることが判った。そこで一同は必死になって仙太を救けに出かけ、雑兵たちや仙太親子を脱出させた。とたんに大音響、茂平は於莵を突き倒すようにして身を伏せた。やがて顔を上げてみれば、砦はあとかたもなく、ただ巨大なキノコ状の翼が天を突き上げるようにグングンのびていた。