「キャラバン(1934)」のストーリー

ハンガリーのトーカイ領では年中行事の一つである酒祭りが近づくに連れて多忙な日が続いた。トーカイ城の現主ヴィルマ伯爵令嬢はその祭りに出席がてら、満10才の誕生日に亡き父の遺言状を開封するために、わざわざロンドンから戻ってきた。この土地の酒祭りにはいつも多数のジプシイを雇って大いに歌う習慣があって、その年も村人は早くから用意版端をしまえヴィルマ嬢の到着を待った。遺言は誕生日の当日彼女の叔父と公証人の目前で開かれた。それによると「ヴィルマは10才に結婚すべし、しからざれば相続権の失喪を見るべし」とあった。叔父は彼女をトーカイ中尉と結婚せしめんと計ったが、ヴィルマは見も知らぬ男と結婚するのは嫌だと叔父の申し出を拒絶し、却って親戚一同唖然たる裡に、そのところに居合わせたジプシイの若者ラツィと結婚してしまった。結婚式は終わったが、ヴィルマの忠実な召使の機転によって2人の間は名ばかりの結婚に終わってしまった。その夜トーカイ中尉は城へ着いた。ヴィルマと中尉とは不思議にも一目見て恋に落ちてしまった。ヴィルマはラツィとの結婚を悔やみ叔父に縋ってラツィとの離婚を頼むのであった。叔父とヴィルマとの討話を立ち聞きしたラツィは怒った。そして失恋の果て、ジプシイの一行を率いてトーカイを去ろうと決心した。驚いたのは村人で彼らは葡萄酒の不作を慮え、ジプシイの慰留に努めたが、ラツィはこれを振り切ってトーカイを去っていった。村人はヴィルマに懇願した。村人の懇情もだし難く、ヴィルマはラツィの後を追ったが、図らずも途中で彼女はトーカイ中尉に会った。ラツィは昔の恋人ティンカと仲直りしていたので、私怨を捨てて、ヴィルマの情を容れ、酒祭りの間じゅうは、葡萄酒を造る村人のためにジプシイの唄と音楽を奏する事を承諾した。そしてヴィルマとトーカイ中尉との結婚式が華やかに挙げられたのであった。