「景子と雪江」のストーリー

成瀬清は結核の新薬を研究中倒れた親友藤川明夫の遺志を継いで、明夫の父藤川の結核研究所へ入った。研究所で清の助手となった小谷雪江は明夫との間に愛児までももうけた仲だったが、明夫の亡き今明夫の親友の清に、心騒ぐものを覚えるのだった。かねて清に関心を抱く研究員、新興財閥西原の令嬢景子は、父に研究所へ莫大な資金を出させたが、西原は清の研究を独占事業化する目的を持っており、清に感づかれて融資を断られた。こんな事で景子と清は気まずかったが、彼女が結核で母を失った為新薬発見に夢中になっている事がわかり、始めて二人の間に和やかな空気が流れた。しかし景子の実母は清の臨床実験中の精神病患者柳沢秋子であり、秋子の病因が遺伝か結核によるものか、彼女は苦しんだ。一方雪江は総てを藤川博士に打明けようと思いながら、決心がつきかねていたが、これを知った清は藤川博士に告げた。そこへ秋子危篤の報がきた。早速駈けつけた清と景子の手で、二人が研究を重ねた新薬が注射されたが、秋子は景子の名を呼びながら死んだ。しかし秋子は菌が脳を犯しているのであり、景子に悪遺伝がない事がわかった。折から坊やを連れて手伝いにきた雪江を嬉しそうな顔で眺める藤川博士の顔を見た雪江は、潔く清に「景子さんの所へ行って上げて。私はお祖父さんと坊やを育てます」と云った。朝日の輝く高原では、母を呼んで泣きながら歩く景子の後を、清は追った。

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