「婚約三羽烏(1956)」のストーリー

大学は出たけれど、世は深刻な就職難。ファッションモデル順子の働きで暮している加村は、その朝、順子から突然別れ話を持出され、深刻な顔で食卓に向ったが、ふと今日は兼一織物会社の就職試験だったと思い出し、別れ話はお預けにして家を出た。首尾よく試験に合格した加村は、同じ合格者である谷山と、自称剣道五段の三木という二人の青年と知り合った。就職が決った加村は狂喜して帰宅したが順子の姿はなかった。一方谷山は中流家庭の坊ちゃん。就職を誰よりも喜んでくれたのは恋人の栄子だった。去った順子を探しあぐねて加村は銀座裏のおでん屋に入ったが、偶然来合せた三木と一緒になり、痛飲した結果は、順子の居ない後へ三木が転り込む破目になった。銀座に店開きをした兼一のサービス・ステーション、婦人服の売場が、加村、谷山、三木の三羽烏の職場だが、三人とも社長のおぼえはまず上乗。社長令嬢の伶子は、この三人に多分の興味がある。まずダンスの上手な加村を誘いナイトクラブへ。有頂天になった加村は、その夜訪ねて来た順子が元に戻ろうというのも聞かず素気なく追帰してしまった。谷山も伶子に誘われ社長邸に伺候、伶子に夢中になって、栄子との結婚話もどこ吹く風といった始末。三木は三木で、伶子のお供を仰せつかり浮々。折角田舎から訪ねて来た許婚のお仙を帰してしまった。だが、お互いの自慢話から、目指す相手が同じ伶子だと判った三人の仲は忽ち険悪。睨み合いの続く職場、そこへ来た主任の磯山の命令で三人は羽田飛行場へ井川常務を迎えに行った。到着した飛行機から降りて来たのは眉目秀麗の青年重役。しかもこの井川常務が社長令嬢と今日の歓迎会で婚約披露すると聞いては、互いに泣き笑いの表情。歓迎会招待を断るのもそこそこに、加村は順子、谷山は栄子、三木はお仙の許へと急いだ。