「雲の墓標より 空ゆかば」のストーリー
昭和十八年、高校から大学までの同窓吉野次郎、藤倉晶、坂井哲夫の三人は学徒兵として大竹海兵団に入り、翌年には予備学生に合格の上、工浦海軍航空隊行きと決定、山田大尉の指導で基礎訓練を受ける。やがて九州の出水航空隊付となり、死に接触した生活が続く。外出の際、吉野は偶然庭を見せて貰った深井家の令嬢蕗子と知り合う。坂井が一人の姉さんに余裕のあるところを見せて安心させようとする中に戦況は緊迫しサイパンも玉砕。十九年冬には三人共、宇佐海軍航空隊付となるが、ここの指導教官野本大尉は彼等と同じ予備学生の出身で何かと一同をいたわってくれる。戦局の危機を慨嘆する三田村大尉。予備学生達も死との対決が近づいたと知り、それぞれに思い出の品を処分する。程なく小尉任官と同時に全員は特攻隊に編成され再び出水へ転属するが、先輩の相沢軍医中尉から、血圧が高いから飛行不適を申請出来ると示唆された藤倉は心乱れる。蕗子と再会し、生への渇望に燃えつつ抱擁を交す吉野。だが遂に出撃の日は来て坂井が先ず飛び立つ。彼からの最後の通信を聞いて自室へ戻った藤倉と吉野の許にも出撃命令。冷静さを坂り戻した二人は最後の酒を汲み交わし、隊長野本機を先頭に雲の彼方へ消えて行った。