「八つ墓村(1996)」のストーリー

昭和24年、神戸、母・鶴子を失い天涯孤独の寺田辰弥は、母方の祖父・井川丑松の訪問を受けた。諏訪法律事務所で丑松と面会した辰弥は、自分が岡山と鳥取の県境にある八つ墓村の、400年も続いた資産家・田治見要蔵の遺児であることを知らされる。田治見家の使いでやって来た未亡人・森美也子の案内で村を訪ねた辰弥は、田治見家の後継ぎになるように言われ当惑した。そんな彼に濃茶の尼という老婆は、辰弥がこの村に入ると八つ墓明神の祟りがあると予言する。八つ墓明神とは、永禄9年、毛利一族に追われてこの土地に逃れて来た尼子の落武者8人の祟りを恐れた村人が建てた8つの墓のことで、かつてこの村では、尼子の残党をかくまっていた村人たちが毛利側の懸賞金に目がくらんで彼らを裏切り、裏切りの首謀者であった田治見庄左衛門が後に発狂して村人7人を惨殺、自らも首をはねて死ぬという事件が起きていた。辰弥の身を案じた諏訪弁護士に依頼された探偵・金田一耕助が村を訪れた翌朝、辰弥の腹違いの兄・久弥が毒を盛られ、金田一は早速、事件解明に乗り出した。そんなころ、辰弥は村の鐘乳洞の中で要蔵のミイラを発見する。大正末期、鶴子を溺愛した要蔵は、彼女を土蔵に拉致して折檻していた。すきを見て逃げ出した鶴子を村人がかくまったと思い込んだ要蔵は突然発狂し、村人32人を惨殺したのである。久弥の通夜の晩、濃茶の尼が殺され、岡山県警の等々力警部は行方不明になっている要蔵の弟・九野医師を容疑者として捜査を開始するが、要蔵の叔母で双子の老婆の妹・小梅がさらに殺され、九野の毒殺死体も見つかったため、捜査はふりだしに戻った。辰弥の部屋の屏風から鶴子と亀井陽一郎という男の写真を発見した金田一は、亀井の素性を求めて岡山へ赴き、鶴子が要蔵の愛人にされる前に亀井の子を宿していたことをつきとめる。八つ墓村では小梅の姉・小竹と久弥の妹・春代が新たな犠牲者となっていた。岡山から戻った金田一は、真犯人は森美也子だと推理する。彼女は以前から想いを寄せていた要蔵の甥・慎太郎に財産を相続させようと、遺産の相続人をひとりずつ消していったのだった。辰弥が要蔵の遺児ではないことが明らかになった今、全てを白状した美也子は服毒自殺した。慎太郎と妹の典子は遺産の相続を放棄して大阪へ出ることになり、辰弥も神戸へと帰った。すべてを解決した金田一耕助もまた、風まかせの旅へ向かう。