「愛にかける橋」のストーリー

1931年7月、ウィーンの警察学校に留学した中国人青年マー・ロンユンは、教官の娘で17歳のファニーと恋に落ちる。しかし結婚を父に反対され、ファニーは帰国するマーの車にこっそりと乗り込むが、父に見つかり連れ戻される。1年後、18歳になったファニーの元にマーから中国行きの切符が届く。ファニーは単身マーの待つ中国江南地方へ旅立ち、結婚式を挙げてマーの母親と暮らし始める。昔ながらの中国女性であるマーの母親の躾は厳しく、封建制の残る中国社会の妻として生きることのきつさをファニーは実感する。それは、彼女にとって初めて接するアジアそのものでもあった。それでもふたりは子宝に恵まれ、ファニーは次第に中国の風俗や生活習慣に慣れてゆく。しかし、日中戦争の勃発、中華人民共和国の建国、そして文化大革命と、中国の体制は大きく変わってゆき、歴史の波がファニーとマーを翻弄する。嫁いできた時まだ若かったファニーは、祖国との別れが長いものになろうとは想像だにしていなかった。しかし戦争と国家間の政治的関係のため、長年祖国の家族と連絡はとれず、両親に会うこともできなかった。それでもファニーは、逆境に立たされる夫を必死に支えながら子供たちを育て、やがて名誉を回復した夫との静かな日々がやってくる。ふたりの愛は終生変わることなく続き、夫の死後もファニーは祖国オーストリアへ戻ることはなかった。ファニーにとって中国は、第二の祖国となっていたのだ。