「ジャージの二人」のストーリー
会社を辞めたばかりの32歳の息子(堺雅人)は、54歳のグラビアカメラマンの父(鮎川誠)に誘われ、北軽井沢の別荘に向かう。父の飼うシベリアンハスキーのミロも一緒。別荘というと聞こえはいいが、実態は虫が出る上に、携帯の電波も入らない山奥の山荘だった。二人はそこで、古着のジャージを着て何もしない時間を満喫する。父はひたすらTVゲームで麻雀をし、息子は小説を書こうと持参した原稿用紙に一文字も書けずにいる。息子に浮気をしている妻(水野美紀)から電話が入ったり、隣の遠山(大楠道代)や父の友人岡田(ダンカン)が入れ替わり立ち代わり訪ねては去ってゆく。そんな緩い毎日が過ぎていく。一年後、二人と一匹は再び別荘へ向かう。今回は浮気をやめた息子の妻も一緒である。三人は揃ってジャージを着るが、息子と妻の間はまだギクシャクしていた。そして、妻は仕事があるといって二日後に帰ってしまう。来年も来るつもりなのか、ジャージは置いたままで。入れ違いにやってきたのは父の娘、花ちゃん(田中あさみ)。息子にとっては母が異なる妹だった。花ちゃんは夏休みにビデオを40本見ると言い、レンタルショップでビデオを借りたものの、ビデオデッキがない。ビデオデッキを持っている遠山に借りてくるが、ピアノの先生の訃報が入り、花ちゃんは東京に帰ることになる。翌朝、遠山に三人とミロの揃った写真を撮ってもらった後、父と花ちゃんは帰京する。一人になった息子は小説を書くために机に向かう。その翌朝、台風一過で爽やかに晴れ渡った空の下、携帯を取り出すと、妻からのメールを受信。息子はその返信を打つと、携帯を天に向かって高く掲げるのだった。