「愛情物語(1955)」のストーリー

ピアニストとして身をたてるべく、エディ・デューチン(タイロン・パワー)は有名なセントラル・パーク・カジノのオーケストラの指揮者ライスマンを訪れた。かつてデューチンがパークシャの避暑地で演奏している時、ライスマンから賞賛されたからだ。しかしいくらライスマンでもすぐ就職させるわけにはいかなかった。当てがはずれてしょげかえったデューチンは、ふとグランド・ピアノが目にとまり、淋しい気持ちでピアノを弾き出す。ところがその調べを聞き入る1人の令嬢、大資産家の姪マージョリイ・オルリックス(キム・ノヴァク)が、事情を聞いて同情し、ライスマンに、オーケストラ演奏の合間にデューチンのピアノ演奏を入れてくれるように頼んだ。ライスマンは大切な客である彼女の申し入れを2つ返事で承諾する。このようなことからデューチンは楽壇に出ることができるようになり、2人の間も発展する。2人はやがて叔父夫婦の祝福を受けてめでたく結婚する。デューチンの楽壇での地位は益々重くなり、やがて愛児ピーターが生まれた。デューチンの喜びは大きかった。クリスマスの夜、演奏が終えてマージョリイが入院している病院にかけつけたデューチンは彼女が重態であることを知る。デューチンが来て間もなく、彼女は息をひきとった。マージョリー亡き後、彼の落胆はひどかった。彼は叔父夫婦にピーターをあずけ、バンドを率いて演奏旅行に出かける。その間に第二次大戦が勃発し、デューチンは海軍に入り、亡妻を一時でも忘れようと軍の演奏関係の仕事を一切断って、軍務に精励する。やがて終戦となり、ニューヨークに帰り、叔父夫婦の家を訪ねる。ピーターは既に10歳になっていた。ところが長い間、面倒を見なかっただけにピーターは彼になついてこない。その反対に英国の戦災孤児の美しい娘チキタ(ヴィクトリア・ショウ)に非常になついていた。しかし間もなく、父子の愛情は音楽を通じて温かいものが流れるようになる。デューチンは昔日の人気をとり戻したが、それと同時にチキタに対して愛情を抱きはじめる。ところがある日、デューチンはピアノの演奏中に左手のしびれを感じる。医者の診断を受けたところ白血病で余命いくばくもないと宣告をうける。デューチンはチキタとの結婚に悩んだが、しかし、チキタは結婚を承諾する。デューチンとピーターに対する深い彼女の愛情がそうさせたのだった。チキタとの結婚生活によってデューチンは幸福をとり戻したが、死期は刻々と迫って来ていた。