「時代革命」のストーリー

デモの発端は、犯罪容疑者の中国本土引き渡しを可能にする逃亡犯条例改正案が立法会に提出されたことだった。参加者たちは「逃亡犯条例改正案の完全撤回」「普通選挙の導入」などを五大要求として掲げ、2019年6月16日には、香港の人口の約3割を占める約200万人(主催側発表)に膨れ上がった。警察との衝突は徐々に激しさを増す。デモ参加者には10~30代の男女が目立ち、70代の男性の姿もある。警官に突然銃撃される青年。「ささやかな我が命を200万人に捧ぐ」という遺書を残し、自殺する者。「光復香港、時代革命」「香港人、加油」と声を上げて抗議する若者たち。中核的な組織体やリーダー不在の運動だが、SNSを駆使し、機動的に統制されている実態も明らかになる。立法会、地下鉄駅、香港中文大学、香港理工大学など、その運動は大きなうねりを巻き起こしてゆくが、やがて香港理工大学でデモ隊が敗北。増える逮捕者。香港から離れていく人々……。民主化運動は逃亡犯条例改正案の撤回を勝ち取ったものの、2020年夏、中国当局の意向を踏まえ、より強圧的な香港国家安全維持法が施行される。自由への圧迫はますます強まり、新型コロナウィルス感染症も追い打ちをかけ、デモは封じられた……。