解説
クロード・オータン・ララ監督の「乙女の星」で、幻の白い猟人を演じ、「のんき大将 脱線の巻」を自作・自演して一九四九年ヴェニス映画祭脚本賞と一九五〇年フランス映画大賞を受賞したジャック・タチが、新しく作りあげた彼独特の喜劇映画。ユニークな詩情と、スラップスティックを加味した文明批評と、アヴァンギャルド風の構成をないまぜたこの作品には、例によって台詞がほとんどなく、物語は場面の動きと音楽によって進行する。シナリオ・脚色・台詞・監督・主演はジャック・タチのワンマン・ショウ。撮影監督はジャン・ブルゴワン、音楽をアラン・ロマンとフランク・バルセリーニ、装置をアンリ・シュミットが担当している。美術協力ジャック・ラグランジュ。一九五四年にニューヨークに招かれた折のタチの経験がこの作品の発想の土台になったという。出演者はタチ以外総て素人ばかりで、パパのジャン・ピエール・ゾラ、ママのアドリエンヌ・セルヴァンチ、息子のアラン・ベクールの他、ドミニク・マリ、ベティ・シュナイダー等が出ている。
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「ぼくの伯父さん」のストーリー
プラスチック工場の社長アルペル氏の新築した邸宅は、モダーンなデザインを凝らし、総ての部分を電化した超モダーン住宅である。しかし肥ったパパとママに育てられ、自動車に乗せられて毎朝学校に通う息子のジェラール(アラン・ベクール)にとって、あんまり機能化された生活は楽しいものではない。彼の本当の友達は、ママの兄さんのユロー伯父さん(ジャック・タチ)だった。下町のアパートのてっぺんの部屋に住み、丸っこい身体にレインコートを着てパイプをくわえた伯父さんは、彼を連れ出しては自由に遊ばせてくれた。そんな伯父さんののんきな生活に、パパのアルペル氏は不満である。知人の大会社に就職を世話したり、お隣りに住む女の人をおよめさんにどうかと考えてパーティに呼んで会わせてみたり、何とかユロー伯父さんを一人前の人物にしようとする。そのたんびに、伯父さんのやるのはへマばかりだった。遂にアルペル氏は自分のプラスチック工場でユロー伯父さんを使うことにしてみる。ところが伯父さんの手にかかると、プラスチックの管はソーセージみたいな形になって機械から出てきてしまう。出来そこないの管を棄てるために、夜どおしかかって伯父さんは苦心する。そしてとうとう、パパのアルペル氏の手によって、伯父さんは田舎の支店に転任がきまった。ジェラールとパパは自動車で、雑踏の空港にユロー伯父さんを送って、さよならを言う。伯父さんをこっちに向かせるためにパパが口笛を吹くと、よその人がそれに気をとられて柱に頭をぶっつけてしまった。ジェラールが伯父さんと町で遊んだ時にやった悪戯と同じだ。思わずパパは、前にそんな時には伯父さんがよくしたように、ジェラールの手をしっかり握ったのだった。
「ぼくの伯父さん」のスタッフ・キャスト
スタッフ |
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キャスト | 役名 |
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「ぼくの伯父さん」のスペック
基本情報 | |
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ジャンル | ドラマ |
製作国 | フランス イタリア |
製作年 | 1958 |
公開年月日 | 1958年12月23日 |
上映時間 | 117分 |
製作会社 | スペクタ・フィルム=グレイ・フィルム=アルテル・フィルム=ラ・フィルム・デル・チエントーロ |
配給 | 新外映 |
レイティング | 一般映画 |
アスペクト比 | スタンダード(1:1.37) |
カラー/サイズ | カラー/スタンダード |
音量 | モノラル |
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