解説
森山啓原作「三郎と若枝」より「天草四郎時貞」の石堂淑朗と「キューポラのある街」の監督浦山桐郎が共同でシナリオを執筆、浦山が監督した現代ドラマ。撮影は「愛と死のかたみ」の高村倉太郎。
この作品のレビュー
ユーザーレビュー
-
ミャーノフ大佐
学生時代に観た記憶がある。当時、16mmに落としたフィルムがレンタルできる様になっていて、どこかの映画サークルか何かが自主上映会を開いていたのを観に行った記憶だ。もうストーリーなんかは忘れているけど、和泉雅子が主演とだけは覚えている。
改めて観て、和泉雅子が良いねえ。可愛い!不良の和泉雅子も可愛いし、更生していく和泉雅子も良いし、ラストの和泉雅子もいい。抱きしめたくなるほど可愛い。後年、おばさんになって冒険家といっていて何やってのか、と思っていたけど、若い頃は良いねえ。代表作にこんな映画を1本でも持っている女優は幸せだな。
浦山桐郎の第2作とのことだが、年齢でいうと33歳くらい。こんな年齢でしっかりした映画を作れることが凄い。
だいだい、脇を固めている役者たちが凄い。よくもこれだけの役者を集められた物だ。殆どが名バイプレイヤーで、後年役者として成功している人達ばかりだ。33歳でこれだけのキャストを使えるのは凄いことだ。これだけの役者たちだと脚本を渡せば、各自がその登場人物になってくれたことだろう。
脚本は石堂淑朗と浦山。石堂は40歳くらいであろうか。この頃はきちんと反体制的な本を書いていた。しっかりした本だ。
カメラは高村倉太郎。しっかりとしたカメラだが、ラストの金沢駅そばの喫茶店のシーンは和泉雅子、浜田光夫を中心に360度カメラを回し、2人の表情と周りの客達の表情を撮している。
それにしてもこの映画が1963年のキネ旬第10位とは。1976年の「嗚呼!!花の応援団」がキネ旬の第6位と比べると、その間にいかに日本映画の力がなくなっていったかが判る。最も「嗚呼!!花の応援団」が6位を取ったその裏も判らないでは無いが。
「非行少女」のストーリー
十五歳の若枝はうす汚ないバーで酔客と酒を飲み、ヤケクソのように女給のハイヒールをかっぱらってとび出した。東京で仕事に失敗して帰って来た二十一歳の三郎は、職安通いの空虚な毎日を送っていた。暗く陰うつな北陸の空、金沢の映画館の前で幼ななじみの二人は再会した。三郎はうらぶれた彼女に、なけなしの金からスカートを買ってやった。喜んだ若枝は、のんだくれの父親長吉と、いやな継母のいる家をとび出したわけを話した。若枝をこれ以上堕落させまいと決心した三郎は、翌日から少しずつおくれた勉強を教えてやった。若枝の心にやすらぎがよみがえり、三郎はうれし泣きする彼女の涙をそっとすすってやるのだった。しかし、その若枝をグレン隊の竜二がしつこく追いまわし、例のハイヒール代三千円をタテに彼女を犯そうとさえした。秋祭りの日、思い余った若枝は学校にしのびこみ金を盗み出したが、小使いに見つかって逃げた。三郎の家では、兄の太郎が村会議員に立候補するため大盤ふるまいの最中、そこへ泥酔した長吉が若枝のスカートを手にどなりこんできた。が、小使いが若枝の盗みをバラしたことからたちまち青菜に塩となった。三郎はその前に竜二から三千円をせびり取られており、いままでの若枝への夢が急に崩れてゆくのを感じた。彼は太郎のすすめを入れて遠縁の家の養鶏場を手伝うことになった。若枝はムリヤリ叔母の家にひきとられたが、ぬけ出すと三郎のもとに走った。だが三郎の態度はつめたく、心のよりどころを失った彼女は、三郎が去ったあと、失火で鶏小屋を全焼させてしまった。誰のせいでもない、ただ偶然がそれを支配しただけなのに世間はあらぬ噂で二人をしめつけた。非行少女の保護機関である北陸学園に入れられた若枝は、暖い眼に見守られながら静かな数週間をすごした。ここでも同級生の富子や新子の誤解から反感をかったが、しまいには同じ境遇にある者同士の奇妙な友情が生れるようになった。若枝はその間たった一度だけそっとぬけ出して、自分の家を見に行った。が、失火事件以来父親たちはどこかへ行ってしまったことが判った。三郎は金沢でバーテンをやりながら細々と暮していた。ある夜、竜二と出合った彼は殴りあいをはじめ、松太郎に助けられた。松太郎は小さな工場で辛抱づよく動きながら組合運動に活躍している男だった。“努力はいつか報われる”その彼の言動は強く三郎の胸を打った。彼はいままで道で若枝に会っても顔をそむけていた自分が恥かしくなった。三郎は学園に急ぐと、彼女にむかって叫ぶのだった。「元気出すのやぞ、二人で何とかやろうぜ」行方の知れなかった長吉は、女にも逃げられ病気で倒れていたのだ。若枝は大阪へ働きに行くことになった。彼女の中に雑草のようなシンの強さを見てとった三郎は、何も言わずに大阪行の列車にのせた。「三年たったら迎えに行くから頑張るんや」三郎が叫んだ。
「非行少女」のスタッフ・キャスト
スタッフ |
---|
キャスト | 役名 |
---|

「非行少女」のスペック
基本情報 | |
---|---|
ジャンル | ドラマ |
製作国 | 日本 |
製作年 | 1963 |
公開年月日 | 1963年3月17日 |
上映時間 | 114分 |
製作会社 | 日活 |
配給 | 日活 |
レイティング | 一般映画 |
アスペクト比 | シネマ・スコープ(1:2.35) |
カラー/サイズ | モノクロ/シネスコ |
関連するキネマ旬報の記事
関連記事一覧 | |
---|---|
1963年1月下旬正月特別号 | 新作グラビア 非行少女 |
1963年4月上旬春の特別号 | 日本映画紹介 非行少女 |
1963年4月下旬号 | 日本映画批評 非行少女 |