執炎

しゅうえん
上映日
1964年11月22日

製作国
日本

制作年
1964
上映時間
120分

レーティング
ジャンル
ドラマ

check解説

加茂菖子の同名小説を「暗殺」の山田信夫が脚色「黒い太陽」の蔵原惟繕が監督した女性ドラマ。撮影は「おんなの渦と淵と流れ」の間宮義雄。
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この作品のレビュー

ユーザーレビュー

  • ミャーノフ大佐

     いやー、拾いものの映画だった。拾いものというのは失礼か。感動させられる映画だった。もう浅丘ルリ子につきる映画だ。
     時代は戦前から戦中、敗戦直後までの時代。舞台は兵庫県の日本海側餘部。餘部と言えば餘部鉄橋があまりにも有名で、昔からよく鉄道写真に限らず紹介されていた名所だ。1986年に強風で列車が鉄橋から転落した事故は当時ずいぶんとニュースになった。そんなところが舞台。
     浅丘ルリ子は山の平家の落ち武者部落に住むきよのと言う役。一方の相手役は海で網元の家の長男拓治を演じる伊丹一三、のちの伊丹十三(私も子供の頃は伊丹一三で覚えていた)。
     子供の頃に浜辺で1度会ったことのある2人。大人になった拓治が船を作る為に山に木を買いに来た帰り、水を欲してきよのの家に寄る。そこから2人の愛が始まる。映画の最初の方で浅丘ルリ子の裸が出てくる。おっぱいはお尻も見えた。トップスターの浅丘ルリ子が裸になるなんてなかなかの根性の入れ方だ。きよのの愛情の深さ、激しさをよく演じている。「私はこらえ性の無い女だから」と愛情表現を隠しもせず、激しく拓治を愛する。拓治が徴兵され、戦地で怪我をして佐世保に戻ってきた時は親身に看病し、餘部の山の中の小屋で二人だけの生活をし、足を切らなければいけないと言われた拓治の足を完治させてしまう。そして昭和20年2月、拓治に再度召集令状が届き、戦地に行き6月に死亡通知が届く。敗戦まであとわずかだったのに。
     山の中でのきよのと拓治の2人だけの生活はまるでおとぎ話のようなお話だ。愛情も誰に遠慮すること無く発露しまるで夢の中の世界、生活だ。それが浜の集落では現実の世界が迫ってきて、周りの人間が戦争で死んでいき、ついに拓治にまでたどり着いてしまった。
     狂おしいまでのきよのの愛情。拓治がいなくなり気がふれてしまった。そして仏壇で拓治の死を知る。
     「私はこらえ性の無い女だから」と拓治にありったけの愛情を捧げる。このきよのの気持ち、その健気さに涙せずにいられない。
     きよのの友人役として芦川いづみが出ている。浅丘ルリ子といい芦川いづみといい可愛くてきれいな女優だなあ、とつくづく思う。きよのの妹役として松尾嘉代が出ているが、やっぱり松尾嘉代は1ランク落ちるなあ。
     監督が蔵原惟繕。そんな上手な監督と思ってないけど、この映画は良かった。
     原作のタイトルが「執炎」なんだろうけど、なんとかならなかったかなあ。

「執炎」のストーリー

日本海の波が打ち寄せる山陰の浜辺で、一人の女が命を断った。七年前種々にとりざたされた噂も、今では人々がその青春を讃え、美しい供養をいとなんでいる。浜の男拓治が初めてきよのに会ったのは、十三の時であった。やがて水産学校を卒業した拓治は山で再びめぐり会ったきよのに、神秘的な美しさを感じた。きよのは、山奥の一角にある平家集落の娘であったが、二人の愛情は古い因習を破って結ばれた。しかし、二人の結婚生活は、戦争のため中断をよぎなくされた。召集された拓治を送ったきよのの節操ある生活は、村人の賞讃の的であったがきよのの胸中は、空しいものがあった。戦局の激しさにつれて、戦死者もふえ、拓治も佐世保病院で傷病生活を送っていた。右脚の損傷により生命の危険にさらされた拓治は、きよのの看病で奇蹟的に回復した。水入らずで闘病生活をするため建てられた山小屋で、日増に笑い声が聞こえるようになった。そして漁師として逞しく働きだした拓治ときよのは、戦争の恐怖におののきながら、狂ったように愛を確かめあっていた。そんな時きよのは親友の泰子の夫が戦死したのを聞き、恐怖から拓治への独占欲は深まっていった。ついに、拓治のもとに赤紙が舞いこんだ。しかし、一途なきよのの姿に拓治は、言葉をのんだ。愛蔵の能面をつけて舞うきよのの姿は、きよのの執念の叫びであった。拓治は出征した。きよのは、拓治の思い出を抱いてさまよい、凍てついた山道にお百度を踏んだ。思いつめた疲労から倒れたきよのは、こんこんと眠りつづけた。六月の初め拓治は南の海に散華した。事実を知らされず、やがて意識を回復したきよのは、仏壇の拓治の写真を見て全てをさとり、黒髪を切り仏壇に供えて、拓治の命を奪った海に静かに身を沈めた。

「執炎」のスタッフ・キャスト

スタッフ
キャスト役名

「執炎」のスペック

基本情報
ジャンル ドラマ
製作国 日本
製作年 1964
公開年月日 1964年11月22日
上映時間 120分
製作会社 日活
配給 日活
レイティング
アスペクト比 シネマ・スコープ(1:2.35)
カラー/サイズ シネスコ

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