「笹笛お紋」のストーリー
お紋は、中仙道で、何者かに襲われた瀕死の浪人辰吉から、「お小夜に頼む!」と五十両の金を預かった。が、息せき切って馳けつけた鬼権一家の勘八から、辰吉が渡世法度のイカサマで鬼権の賭場を荒したと聞いて、あっさり金を渡した。そして、乱暴されかかった娘を得意の投げ笹で助けたお紋だがその娘こそ、お小夜であった。お小夜の父庄吉は、鬼権の無理難題で、五十両の金を工面せねば茶店を取り上げられる運命にあり、辰吉の帰りを待ちわびていることを知ったお紋は、一肌脱ぐことにした。鬼権の賭場に乗り込んだお紋は、身体を賭け勝負を挑んだ。そして、イカサマ賽を投げ笹で破ったお紋は驚く手下共を尻目に、金を奪って闇に消えた。やがて追手をかわしていたお紋は、飯盛女おえんに匿まわれた。しかし、庄吉父娘に乱暴する、鬼権のあくどい仕打ちに我を忘れて飛び出したお紋は、鬼権の術中におち入り、笹をとり上げられ、手ひどい私刑を受けた。だが、お小夜をなぶりものにする卑怯な鬼権のやり口に憤激したお紋は、隠し持っていた最後の一枚の笹を投げた。たじろぐ鬼権のスキに、笹むらに駆けこんだお紋は、笹を握っていた。次々と放つ笹は、眼をえぐり、胸を刺した。倒れゆく子分の中から、おえんの夫専十郎が殺気をみなぎらせて現われた。おえんの身請けのためお紋殺しを買って出たのだった。お紋の必殺の妙技“さみだれ落し”の笹も専十郎の剣に斬り払われ、空しく舞った。だが、専十郎の剣が頭上に閃めいた一瞬、お紋逆転の秘術“昇竜の笹”が専十郎の喉を貫いた。そして、子分をタテに逃げまどう鬼権も、お紋の怒りの笹に胸を射抜かれ、地獄に落ちた。