「独眼竜政宗(1959)」のストーリー
戦国乱世の頃、陸奥の麒麟児伊達政宗は、知勇ともに勝れた若き武将として知られていた。豊臣秀吉は彼を恐れて、腹臣石田三成の縁つづきにある和田斉之を政宗の隣国に派遣した。政宗はこうした秀吉の意図を察して、鷹狩りでとらえた鶴を聚楽第の竣工祝いとして秀吉におくることによって、彼との親睦をはかった。そのような政略を離れて、山野を勇壮にかけまわる時が、政宗にとって一番心楽しい時だった。そんな時秀吉と対立関係にある北条家とつながりをもつ、奥羽路の名家田村家から、息女愛姫を政宗にめあわせたいとの申し出があった。政宗は愛姫と対面し、その清らかな美しさにうたれたが、政略のにおいの濃いこの縁組みを断わった。ちょうどその頃、秀吉の命をうけて隣国の和田斉之が政宗に対して挑発行為にでた。だが彼は逆に斉之を術中におとし入れて難を避けた。ますます脅威を感じた秀吉は暗殺団を送って政宗殺害を計った。だが、一味の矢を右眼にうけて重傷を負いながら、政宗は強胆な精神力をもって危機を脱出した。彼は、以前に狩の途中で木こりの勘助から聞いた“白蛇の湯”という温泉郷に身をやすめた。彼の身分を知らぬ勘助と、その娘千代の素朴な愛情につつまれて、彼には、両眼がそろっていた時には知らなかった新しい世界がひらけてきた。政宗の消息を案じた愛姫が“白蛇の湯”にたずねてきた。折しも、秀吉の軍勢が北条家討伐のため小田原に向って進撃をはじめたとの報が入った。そして同時に北条派の畠山軍が、政宗の父輝宗を人質にさらう事件が起った。所詮助からぬ父を、涙をのんで敵畠山もろとも射殺して、政宗は世の習いとはいえ政情に支配される自分の運命に泣いた。悲壮な心を抱いて、政宗は自分の右の眼をうばった秀吉と対面するため、粛然と兵を小田原に進めた。