解説
プロレタリア文学の最高峰と称される小林多喜二の『蟹工船』を新たに映画化。蟹を獲り缶詰に加工する蟹工船を舞台に、自由を奪われ搾取される労働者たちの一斉蜂起を描く。監督は、「疾走」のSABU。時代考証よりヴィジュアルを重視し、独特の映像を創り出した。出演は、「伝染歌」の松田龍平、「真木栗ノ穴」の西島秀俊。
「蟹工船(2009)」のストーリー
出稼ぎ労働者たちがカムチャッカ沖で蟹を獲り、船上で缶詰に加工する蟹工船・博光丸で、雑夫・宮口(高谷基史)が監視の目を盗み脱走を試み、失敗する。博光丸の労働者たちは監督・浅川(西島秀俊)から人間扱いされず、劣悪な環境におかれ、安い賃金で過酷な労働に従事していた。そして仕事の後は、自分たちの境遇を自慢げに語り合っていた。漁夫・新庄(松田龍平)は来世に希望を見出そうと語り、集団自殺を促す。しかし決行の瞬間、誰も死ぬことはできなかった。労働者たちは、新庄の言葉に乗せられたことを笑い合う。その後、彼らはさらに辛い重労働へ駆り出される。そして極限状態の中、仲間同士の内紛が勃発する。ある日、新庄と漁夫・塩田(新井浩文)は漁に出て、博光丸からはぐれてしまう。彼らはロシア船に助けられ、ロシア人たちの陽気な宴を目の当たりにし、自由な世界を知る。そのころ、脱走に失敗した宮口は、折檻を受けトイレに閉じ込められていた。宮口は意識が朦朧とする中、何かを訴えるように扉を叩く。その音は、蟹工船の全ての乗組員の耳に届いた。やがて、宮口は絶命する。若い雑夫が生きることに絶望し、極寒の海に飛び込もうとする。それを、ロシア船から戻ってきた新庄と塩田が救う。新庄は、夢見るだけでなく行動することが必要だと訴え、一斉蜂起を呼び掛ける。
「蟹工船(2009)」のスタッフ・キャスト
スタッフ |
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キャスト | 役名 |
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「蟹工船(2009)」のスペック
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