「ワカラナイ」のストーリー
母子家庭で育ち16歳になる川井亮(小林優斗)は、田舎町の粗末なアパートでひとり暮らし。入院中の母・伸子(渡辺真起子)を抱えながらも、コンビニのアルバイトで生計を立ててきたが、母の闘病生活が長引くにつれ日々の食事すら満足にできなくなってきた。今日もバイト先のコンビニでレジをごまかし、おにぎりやサンドイッチを持ち帰り空腹を満たす日が続く。同僚の木澤(柄本時生)も亮を気遣うが、誰も彼の孤独を埋めることはできなかった。夏休みのある日、レジのごまかしが店長に見つかり、亮はアルバイト先をクビになる。生活の糧を失い戸惑う亮は、やりきれない思いでひとり秘密の場所で父の住む東京の地図と、父と幼い頃の自分の写真を見つめる。それは亮にとって現実から目をそらすことのできる唯一の瞬間であった。頼るあてもなく入院中の母のもとを訪ねるが、希望を失った母は父への不満をぶつけるばかり。亮は張りつめていた気持ちが一気に崩れてしまう。そんなある日、母の死が訪れる。病院への支払いや葬儀代の工面という現実に追い込まれ、亮の不安と絶望は頂点に達する。アルバイト代の残りも底をつき、亮は母親の亡骸を自らの手で葬ることを決意。亮は、美しく青く塗られた小さなボートで母を海に送るのだった。一人きりの葬儀の後、亮は住み慣れたアパートを出て、父のいる東京へと向かう。ようやく父との再会を果たす亮。だが、そこには幸福とは程遠い現実が待っていた……。