「風切羽 かざきりば」のストーリー
母や姉から受けた激しい虐待が原因で、児童養護施設に措置されている高校3年生のサヤコ(秋月三佳)。規定によって高校を卒業したら施設を出て行かなければならない彼女は、小さい頃にバレエを習っていたことから、高校卒業後はダンスの専門学校に通うつもりでいた。だが、親の援助や奨学金は期待できず、自分で学費を稼がなければならない。様々な方法でお金を貯めて学費に充てようと考えていたが、施設では児童のお金の管理も職員が行なっており、自由にならない。さらに、施設で暮らす他の少女たちともうまくいかず孤立。そんな窮屈な生活に嫌気が差したサヤコは、面会に来た父マサカズ(重松収)の車に飛び乗って施設を逃げ出す。ところが結局、父にも置いて行かれ、1人ぼっちに。やむなく姉サユリ(寺田有希)のアパートを訪れるが、やはりうまくいかない。藁をも掴む思いで、母ユカリ(川上麻衣子)と暮らしていたアパートへ向かう。しかし、若い男と一緒のユカリは娘を拒み、家の中に入れてくれない。今更、施設には帰れず、他に行く場所もない……。当てもなく夜道を彷徨っていると、ケンタ(戸塚純貴)という不思議な少年に出会う。自転車で街を徘徊し、道行く人々に“僕の事、知りませんか?”と訪ねるケンタの自分探しの旅に付き合うことになるサヤコ。アイデンティティを失った2人は、ネオン煌めく眠らない街を自転車で駆け抜ける。ケンタは会う人毎に自分を知らないか尋ねるものの、知っていると答える人はいない。だが、サヤコを知る人は多く、声を掛けてくる。自分の正体がバレると、決まってケンタに自転車を出すよう促すサヤコ。彼女の過去に何が……。そして、暗闇を切り分けるように進む2人の旅路は、紆余曲折を経て、ある事件を引き起こす……。