レイブンズの映画専門家レビュー一覧

レイブンズ

代表作『鴉』などで世界の写真史に名を残す伝説の写真家・深瀬昌久と、彼を支えた妻・洋子の愛を描くラブストーリー。写真に取り憑かれた天才の狂気と純粋さ。やがて深瀬が抱える闇は、”鴉の化身”として転生。洋子は、深瀬を闇堕ちから守ろうとするが……。出演は『SHOGUN 将軍』の浅野忠信、「由宇子の天秤」の瀧内公美。監督は「イングランド・イズ・マイン モリッシー,はじまりの物語」のマーク・ギル。
  • 映画評論家

    上島春彦

    ヴィジュアルが完璧で冒頭の煙草の煙はVFXだが、きめ細かい処理に感服。伝記映画のためフィクション部が限定的で、せっかくの鴉の幻影も説明的に留まるのは残念か。ファウストにおけるメフィストというよりも、芸術のミューズみたいな存在なんだね。主人公の写真家と同時代を同じように生きて死んだ赤塚不二夫もかつて浅野忠信が演じている。妙な符合だ。ニコの《アイル・ビー・ユア・ミラー》を梶芽衣子やザ・ダイナマイツの昭和歌謡とごっちゃに味わえるのも本作の楽しさ。

  • ライター、編集

    川口ミリ

    深瀬と洋子が展覧会で再会するシーンの切り返しがダイナミック。深瀬の洋子をみる瞳は明らかに喜び、潤んでいる。だがある瞬間、目から光が消える。徐々にカメラ目線へ。眼差しの先には、鴉。深瀬は漆黒の闇に?み込まれる??。実話ベースの本作が描くのは、あくまで人と人。深瀬と洋子には個々の世界があるのが窺え、“芸術家とミューズ”に矮小化しないのがいい。主題へのカラッとした、節度ある距離感は英国出身の監督のセンスによるものだろう。ラストのThe Cureもグッとくる。

  • 映画評論家

    北川れい子

    “カメラじゃなくちゃんとこっちを見てよ。あなたはいつも自分ばかり見ている”と妻で被写体の洋子が深瀬に言う。ずっと深瀬を支えてきた助手に写真をやめた理由を問われ、“写真はみんなをダメにする”と深瀬。“写真じゃなく自分がでしょ”と助手。そんな深瀬は、自ら生み出した異形の化身に追い詰められ、ますます自分の穴蔵に。それにしても特異な写真家の生きざまを、家族のしがらみなどを入れながら昭和的感性でアート映画に仕上げた監督とスタッフ、俳優陣に畏れ入る。 

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