夏が来て、冬が往くの映画専門家レビュー一覧

夏が来て、冬が往く

中国の海辺の町を舞台に、家の都合で養子に出された三女の心の軌跡と家族愛を描くヒューマンドラマ。実父の死をきっかけに生家を訪ねたチアニーは、自分には二人の姉と弟がいて、次女と自分が養女に出されていたことを知り、過ぎし日に想いをめぐらせる。日本の大学で映画製作を学んだ経験を持つ彭偉(ポン・ウェイ)監督による長編デビュー作。脚本制作や撮影は中国で、仕上げ作業は日本で行われた。東京国際映画祭2023「東京・中国映画週間」新鋭監督賞受賞。
  • 俳優

    小川あん

    ドラマ的演出でプロットもありきたり。主人公の女性は恋人からのプロポーズに躊躇う。生き別れになっていた実父の死。隠されていた姉弟。人物描写が表面的で、展開が引き延ばされすぎていて、苦しい。自国の社会のひずみにスポットを当てるならば、これだけの重要なテーマを綺麗に収めてはいけないと思う。フレームに動きを加えるためだけにカメラがズームされている箇所が多くあったのも残念。完璧にすることを意識せず、作家性を探すところからトライしてみたほうが良かったのでは。

  • 翻訳者、映画批評

    篠儀直子

    演技のつけ方も話の運び方も、ところどころのカットつなぎも、もっさりした感じがしてどうにもなじめず、ついには作品のメインの主張を登場人物がそのまま口に出してしまうのでいよいよ頭を抱えてしまったのだが、風光明媚な地方都市をとらえた超ロングショットと、この土地特有の風習や儀式の描写が、作品の大きな魅力であるのは間違いない。また、これほど女子が歓迎されない社会にあって、女の子をふたりも引き取った主人公の養父はどんな人だったのか、それを思うと心を揺さぶられるものがある。

  • 編集者/東北芸術工科大学教授

    菅付雅信

    風光明媚な中国の海辺の街を舞台に、養子に出された女性が生家の家族と過ごす数日間のドラマ。大都市に生きる主人公と地方都市の対比、世代の対比などを織り込みながら、現在の中国的家族像を描く。話に大きなドラマ性があるわけではないので、映像力やモダンなセンスなどが問われる内容なのだが、デジタルカメラによるのっぺりとした映像と工夫のない展開で、あえて劇映画にする意図が見えず。撮影は中国で、仕上げ作業は日本でという中日共同作品だが、共同作業の利点が反映されていない。

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