教皇選挙の映画専門家レビュー一覧

教皇選挙

バチカンのシスティーナ礼拝堂で行われる教皇選挙<コンクラーベ>の裏側を描くヒューマン・ミステリー。ローマ教皇が死去した。悲しみに暮れる暇もなくローレンス枢機卿は新教皇を決める教皇選挙を執り仕切るが、その渦中、バチカンを震撼させるある秘密を知る。出演は「ザ・メニュー」のレイフ・ファインズ、「ラブリーボーン」のスタンリー・トゥッチ、「ガープの世界」のジョン・リスゴー、「ブルーベルベット」のイザベラ・ロッセリーニ。監督は『西部戦線異状なし』(22)で第95回アカデミー賞国際長編映画賞など4冠を獲得したエドワード・ベルガー。
  • 映画評論家

    川口敦子

    90年代グッド・マシーン社でA・リーやT・ヘインズにつき修業した監督ベルガー。その佳作「ぼくらの家路」(14)は、R・ハリス原作の新作とはまた別の世界を描きながら、目の前の困難に耐える少年を無駄口叩かずみつめる眼差しが、ヴァチカンの閉塞的時空で欲望と陰謀渦巻く教皇選挙の現実に耐えるひとり(R・ファインズ適役!)を活写する様と重なり面白い。70年代A・J・パクラの政治的スリラーを意識したという今回も不安を抱え耐える存在への共感がふるふると映画を活かしている。

  • 批評家

    佐々木敦

    レイフ・ファインズ演じるローレンス首席枢機卿がバチカンに急遽やってくる冒頭のシーンを除き、映画はシスティーナ礼拝堂の敷地内を一歩も出ない。コンクラーベを巡る思惑と策謀。繰り返される投票が静かなサスペンスを生むが、広大な密室劇の「外」を開示するある出来事以降、物語は大きく転回する。ファインズをはじめとする俳優陣の重厚な演技、監督ベルガーの手堅い演出も見事だが、これはピーター・ストローハンのシナリオの勝利だろう。一種の宗教論とも呼ぶべき作品だと思う。

  • ノンフィクション作家

    谷岡雅樹

    映画には作者の主張が滲み出る。対立する候補がいても、言い分を並列に描いても、そこには作家の態度が現れる。理想を捨ててはならない、という主張の人物こそ際立つ。103人という多人数でもって、人間模様を映し出し、善悪の境界を微妙に群像配置する。右往左往し逡巡する集団の様を俯瞰で捉えた洪大な映像で見せる。脚本家は「裏切りのサーカス」よりまた一つ権力闘争を心で紡ぐ点描図。選挙には不純物が混じる。形勢は刻一刻変転する。点である個々の人間の動線。これこそがまさに映画だ。

  • 映画評論家

    川口敦子

    90年代グッド・マシーン社でA・リーやT・ヘインズにつき修業した監督ベルガー。その佳作「ぼくらの家路」(14)は、R・ハリス原作の新作とはまた別の世界を描きながら、目の前の困難に耐える少年を無駄口叩かずみつめる眼差しが、ヴァチカンの閉塞的時空で欲望と陰謀渦巻く教皇選挙の現実に耐えるひとり(R・ファインズ適役!)を活写する様と重なり面白い。70年代A・J・パクラの政治的スリラーを意識したという今回も不安を抱え耐える存在への共感がふるふると映画を活かしている。

  • 批評家

    佐々木敦

    レイフ・ファインズ演じるローレンス首席枢機卿がバチカンに急遽やってくる冒頭のシーンを除き、映画はシスティーナ礼拝堂の敷地内を一歩も出ない。コンクラーベを巡る思惑と策謀。繰り返される投票が静かなサスペンスを生むが、広大な密室劇の「外」を開示するある出来事以降、物語は大きく転回する。ファインズをはじめとする俳優陣の重厚な演技、監督ベルガーの手堅い演出も見事だが、これはピーター・ストローハンのシナリオの勝利だろう。一種の宗教論とも呼ぶべき作品だと思う。

  • ノンフィクション作家

    谷岡雅樹

    映画には作者の主張が滲み出る。対立する候補がいても、言い分を並列に描いても、そこには作家の態度が現れる。理想を捨ててはならない、という主張の人物こそ際立つ。103人という多人数でもって、人間模様を映し出し、善悪の境界を微妙に群像配置する。右往左往し逡巡する集団の様を俯瞰で捉えた洪大な映像で見せる。脚本家は「裏切りのサーカス」よりまた一つ権力闘争を心で紡ぐ点描図。選挙には不純物が混じる。形勢は刻一刻変転する。点である個々の人間の動線。これこそがまさに映画だ。

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