おいしくて泣くときの映画専門家レビュー一覧

おいしくて泣くとき

「大事なことほど小声でささやく」の監督・横尾初喜と原作者・森沢明夫が再タッグを組んだヒューマンドラマ。幼い頃に母親を亡くした心也と、家に居場所がない夕花。孤独を抱える同級生のふたりはひょんなことから「ひま部」を結成、互いに距離を縮めてゆくが……。出演は、アイドルグループ『なにわ男子』のメンバーで「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」など俳優としても活躍する長尾謙杜、「水は海に向かって流れる」の當真あみ。
  • 映画評論家

    上島春彦

    子ども食堂の意義を説く貴い企画である。しかし映画としては問題含み。意義を理解しないクズみたいな連中と貧困少女をさげすむクズな女子生徒たちのいじめ描写にうんざり。教師が輪をかけて無能なのもどうかと思う。世の中こんなもんと脚本家は言いたいのか。そして少年時代の主人公がさらにふがいない。少女が健気なのが唯一の救いじゃ映画としては持たんよ。親切な工務店の謎というのもあるのだが、常識で考えて謎にしておく理由がない。映画の物語の都合に過ぎないだろう。

  • ライター、編集

    川口ミリ

    若い世代はネオリベラリズム以外の社会像を知らないがゆえに、何事にも自己責任を刷り込まれているといわれる。そんな中で「貧困は自己責任では解決できない」と伝える真っ当な物語を、人気の長尾謙杜を主演に描いたのには、それがたとえ薄味であっても一定の価値があると感じる。けれど映画としては物足りなくて……。キャストは役を全うしているし、夏らしい自然現象が物語を美しく彩ってもいるが、ラストの仕掛けも含めすべてに新鮮味がなく、何か他にないのかなと思ってしまった。

  • 映画評論家

    北川れい子

    タイトルが子ども食堂絡みであることはすぐ分かる。貧困、差別に孤独、家庭内暴力などでお腹をすかせた子どもたち。が本作の場合、貧困や家庭内暴力は初恋話の小道具にすぎず、それがいささか引っ掛かる。子ども食堂の息子のボクが、そういう状況にいる同級の少女を連れ出しての危なっかしい逃避行。それから30年。実らなかった初恋を引きずったボクは子ども食堂を引き継いでいるのだが。ともあれ終盤の思いがけないエピソードは観客への玉手箱。これはこれでいいか。

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