マリア・モンテッソーリ 愛と創造のメソッドの映画専門家レビュー一覧
マリア・モンテッソーリ 愛と創造のメソッド
モンテッソーリ教育の生みの親であるマリア・モンテッソーリが、1907年に子どもの家を開設するまでの7年間を描くドラマ。20世紀初頭のイタリア・ローマ。マリアは、娘の学習障がいが明るみに出そうになり、パリから逃げてきた高級娼婦のリリと出会う。出演は、「泣いたり笑ったり」のジャスミン・トリンカ、「パーフェクト・ナニー」のレイラ・ベクティ。監督はこれまでドキュメンタリーを手がけ、長編劇映画は本作が初監督となるレア・トドロフ。
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映画評論家/番組等の構成・演出
荻野洋一
モンテッソーリ教育法の創始者の伝記は、現代映画にふさわしい好企画だ。家庭に収まることを断固拒絶して研究活動に邁進した主人公女性の自己解放にフォーカスしたシナリオはよい。架空の高級娼婦を作り出し、彼女と知的障がいをもつ娘との関係の推移を、主人公と合わせ鏡にしたのが秀逸だ。ただしこれがデビュー作となる監督は思想家ツヴェタン・トドロフの娘とのことだが、力不足を露呈している。意義深い題材を揃えても、カメラに収める際のアイデアが不足。もっとシネマを飛翔させよ!
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アダルトビデオ監督
二村ヒトシ
子どもたちはもちろん全員ガチで、ドキュメンタリーだとまでは言わないが少なくとも「頭が良くて芝居が上手な子役」の達者な演技を見せられているよりは楽しい。この子どもたちが出演してるからこそ大人の臭い芝居が伝える切実なフェミニズムが心に響く。余談ですけど、現代日本でも続いてる「健常」児へのモンテッソーリ教育は、かえって児童から協調性を奪うという批判もあるようだ。だが普通の学校で教えてる協調性とやらのせいで世界はこんなになっちゃったんじゃないのって気もするんだが。
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著述家、プロデューサー
湯山玲子
子持ちキャリア女性の先駆者を描くときの定石は、仕事か、子育てかの悩みだが、本作においてはその軸が強調されていることに違和感アリ。何せ主人公は、教育を哲学、精神医学も含め徹底的に科学した合理精神の女性なので、そのあたりを描くには丁寧さと説得力が必要。夫の嫉妬心と裏切り、障害を持つ私生児に悩むパリの高級娼婦との立場を越えたシスターフッドと、『虎に翼』的な紋切り型展開も女性映画インフレ状態の今においては、今一歩人間模様の強度が欲しかった。
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