その花は夜に咲くの映画専門家レビュー一覧

その花は夜に咲く

初長編「第三夫人と髪飾り」で注目を集めたベトナムの新鋭アッシュ・メイフェアの長編第2作。経済解放間もない1998年のサイゴンで歌手として生きるトランスジェンダーのサンとボクサーのナムは、愛し合いながら懸命に暮らしていたが、容赦ない夜の世界に飲み込まれていく。出演は、これが映画初出演となるチャン・クアンと、ベトナム期待の若手俳優ヴォー・ディエン・ザー・フイ。
  • 映画評論家

    鬼塚大輔

    いや、これは主人公カップルの片方をトランスジェンダーにしなくても成り立つ古臭い話ではないのか?と思って観ていると、途中からもう一人(二人?)が加わって、性別/性差を超えた小さくとも理想的な共同体の成立と崩壊の物語として奥行きが出てくる。いくつかの点で「エミリア・ペレス」を想起させるのも、二つの作品を合わせて考えると興味深い。ヴェトナムの街並みをしっとりした触感で捉えた撮影も魅力的で、作品世界の中に引き込まれていく。

  • ライター、翻訳家

    野中モモ

    ナイトクラブで歌うあでやかな姿も、化粧を落とした自宅での姿も、主人公を演じるチャン・クアンが本当に美しく撮られているのが見どころ。ちょっとIS:SUEの釼持菜乃に似ているし、往年のナスターシャ・キンスキーや満島ひかりを思わせる瞬間もあってまさに「なりたい顔」。社会の周縁に生きる若者たち(というかほぼ子ども)が肩寄せ合って疑似家族を築く中盤はある種の少女漫画に通じる味わいがあって引き込まれたが、悲劇に向かう展開はあまり好きになれなかった。

  • SF・文芸評論家

    藤田直哉

    魅力的で壮麗な衣裳や美術で現代ヴェトナムが活写されており、ハッとさせられるような都市描写が幾度もある。貧困な若者が格闘家になったり、トランスジェンダーの女性たちが身体を売っており、富裕層との描き方の差、彼らの精神的な苦しさの描写には胸が詰まる。が、どうも肝心のドラマが弱い。対立と葛藤がはっきりと顕在化しないような個と関係性の社会だからこそ中盤の関係性になったのかもしれず、そこは良かったのだが、それをもう少し掘り下げてほしかった。

  • 映画評論家

    鬼塚大輔

    いや、これは主人公カップルの片方をトランスジェンダーにしなくても成り立つ古臭い話ではないのか?と思って観ていると、途中からもう一人(二人?)が加わって、性別/性差を超えた小さくとも理想的な共同体の成立と崩壊の物語として奥行きが出てくる。いくつかの点で「エミリア・ペレス」を想起させるのも、二つの作品を合わせて考えると興味深い。ヴェトナムの街並みをしっとりした触感で捉えた撮影も魅力的で、作品世界の中に引き込まれていく。

  • ライター、翻訳家

    野中モモ

    ナイトクラブで歌うあでやかな姿も、化粧を落とした自宅での姿も、主人公を演じるチャン・クアンが本当に美しく撮られているのが見どころ。ちょっとIS:SUEの釼持菜乃に似ているし、往年のナスターシャ・キンスキーや満島ひかりを思わせる瞬間もあってまさに「なりたい顔」。社会の周縁に生きる若者たち(というかほぼ子ども)が肩寄せ合って疑似家族を築く中盤はある種の少女漫画に通じる味わいがあって引き込まれたが、悲劇に向かう展開はあまり好きになれなかった。

  • SF・文芸評論家

    藤田直哉

    魅力的で壮麗な衣裳や美術で現代ヴェトナムが活写されており、ハッとさせられるような都市描写が幾度もある。貧困な若者が格闘家になったり、トランスジェンダーの女性たちが身体を売っており、富裕層との描き方の差、彼らの精神的な苦しさの描写には胸が詰まる。が、どうも肝心のドラマが弱い。対立と葛藤がはっきりと顕在化しないような個と関係性の社会だからこそ中盤の関係性になったのかもしれず、そこは良かったのだが、それをもう少し掘り下げてほしかった。

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