クィア/QUEERの映画専門家レビュー一覧

クィア/QUEER

「君の名前で僕を呼んで」のルカ・グァダニーノが1950年代のメキシコシティを舞台に若く美しい男子学生にのめり込んでいく中年のアメリカ人駐在員の姿を描いたラブストーリー。アメリカのビート・ジェネレーションを代表する作家の一人、ウィリアム・S・バロウズが謎多き人生を赤裸々に綴り、一度は出版を封印した自伝的小説が原作。出演は「007」シリーズのダニエル・クレイグ、『もうひとりのゾーイ』のドリュー・スターキー、「ミセス・ハリス、パリへ行く」のレスリー・マンヴィル。
  • 映画評論家/番組等の構成・演出

    荻野洋一 |クィア/QUEER

    グァダニーノが真に偉大な映画を作ったことはまだない。つねに長短両面があるが今回もそうだ。恋人の青年に対する経済的優越感と、捨てられる不安に怯える中年男のフラジャイルさを、007スターがみごとに体現して心打たれた。一方ダメなのは、ここで描かれるメキシコが浪漫的書割でしかないこと。「愛人/ラマン」からなんの進歩もないエキゾチックかつ見下された第三世界像。主人公たちは会話らしい会話を英語の通じるアングロサクソン同士でのみ行う。白人芸術家の限界がまた露呈した。

  • アダルトビデオ監督

    二村ヒトシ |クィア/QUEER

    ダニエル・クレイグが美青年を相手にAVみたいなディープキスをして、フェラチオもしてる! 男体の触りかたが丁寧だけどキモくて可愛らしい。ジェームズ・ボンドはこんなに丁寧に女体に触っていただろうか……。不満だったのはダニエルじゃなかったバロウズでもなかった主人公のリーが、おフェラの後にAV女優みたいに喉から液を溢れさせてくれなかったのと、お爺ちゃんで薬物依存なのに筋トレしてるとしか思えぬ美しい体だったこと。しかしこれはバロウズも草葉の陰で喜んでいるでしょう。

  • 著述家、プロデューサー

    湯山玲子 |クィア/QUEER

    バロウズ小説の映画化となると、ぶっ飛びドラッギー映像博覧会になりがちだが、本作はドラッグ体験を「愛する男とひとつになりたい」という主人公の動機に結びつける。監督お得意のコンテンポラリーダンス風味が効いた酩酊場面と、所作や目つきまで子細に描かれるセックスシーンが、同じ強度を持つからこそ、快楽と死そして生というバロウズの本質が浮かび上がるというわけだ。メガネ細マッチョの逸材ドリュー・スターキーのクールさにジュンとなっちゃう女子は多いとみた。

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