残穢 ざんえ 住んではいけない部屋の映画専門家レビュー一覧

残穢 ざんえ 住んではいけない部屋

第26回山本周五郎賞を受賞した小野不由美のドキュメンタリー・タッチのホラー小説『残穢』(新潮社・刊)を、「白ゆき姫殺人事件」「ゴールデンスランバー」の中村義洋監督が映画化。あるマンションの一室で起こる奇妙な音の調査に端を発し、かつての住人たちが次々と事件を起こしていること、そして恐ろしい過去が浮かび上がってくる。事件を追う小説家を「ストロベリーナイト」の竹内結子が、部屋の住人である女子大生を「さよならドビュッシー」の橋本愛が演じるほか、モデル出身の坂口健太郎、「るろうに剣心」シリーズの滝藤賢一、「超高速! 参勤交代」の佐々木蔵之助らが出演。
  • 映画評論家

    上島春彦

    星が増えたのは、私が雑誌『幽』の大ファンだから。原作者の夫婦作家に加え、平山氏、福澤氏っぽいキャラまで現れて「まいりました」と言うしかない。手法としては投稿実話怪談を模した古典的スタイル。エピソードがエピソードを呼ぶ「呪怨」風、あるいは「フィッシュストーリー」風とでも。生き埋め炭鉱夫の怨みを描いて、亀井文夫のある作品に通ずるところもある。呪いが感染する日本近代史。ただ主演の橋本愛が死ぬほど怖い目に遭うわけじゃない、これが不思議。ほどほどなんだね。

  • 映画評論家

    北川れい子

    ノンフィクション仕立ての小野不由美の原作は、奇妙な現象が繰り返し起こる場所や空間を、過去にまで遡って克明に追求していたが、正直、あくまでも活字による怪談話、読んでいて怖くなることは全くなかった。それだけに怨念や因縁もからむ原作をどう映画化するか期待したのだが、“音”と何者かの“動き”の見せ方は成功しているものの、超常現象を謎解きしたりの理詰めの部分が凡庸で、得体の知れない恐怖だけでグイグイ押してほしかった。で、思った。一番怖いのはやっぱり、人間。

  • 映画評論家

    モルモット吉田

    因縁の連鎖は戦前旧家の奥山家一家皆殺しという横溝的な世界にまで至るが、その長い時間と闇を取材対象者から丹念に聞き取る過程を中村義洋が撮ることで凡百の怪談映画と一線を画する。何せ『ほんとにあった!呪いのビデオ』シリーズの監督だけに近年の作品には首を傾げることも多かったが原点回帰である。橋本愛のごく普通な女子大生ぶりや、「はやぶさ」と同じく眼鏡をかけると異様に地味になる竹内結子も本作には相応しい。因縁と言えばこの会社が配給で「奥山怪談」とはね……。

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