風の波紋の映画専門家レビュー一覧
風の波紋
『大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ』開催地である豪雪地帯・越後妻有地域の里山に暮らす人々を追ったドキュメンタリー。「チョコラ!」の小林茂監督が5年かけ、雪かきを始め協同作業が欠かせない地での人々の結びつきを撮る。「チョコラ!」や小林監督が撮影した「阿賀の記憶」に携わった東京国際映画祭プログラミングディレクターの矢田部吉彦が、プロデューサーとして本作にも参加。「39窃盗団」の松根広隆が撮影を手がけ、日本映画撮影監督協会第24回JSC賞を受賞した。山形国際ドキュメンタリー映画祭2015正式出品作品。
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映画評論家
上島春彦
劇映画というのは見ればわかるという大前提があるが、こういう時間軸がやたら長いスパンの記録映画は、一度見たくらいでは分からないという曖昧さが必ず残る。それをお客さんには逆に楽しんでいただきたい。一応、物語の始まりは今から五年前の大地震で壊れかかった古民家をつぶさずに再建する小暮さん夫婦のエピソードであり、これは大成功に終わる。だが一方で壊すことになる民家の件も出てくるし、その画面もまた圧巻。幸せに生き幸せに屠られた山羊のエピソードとかに心なごむね。
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映画評論家
北川れい子
厳しい環境の中、自然と共存しながら農村生活を送っている人たちは大勢いる。この記録映画は14年前にあえてそういう生活を選んで東京から移り住んだ一組の夫婦と、その集落の人々との日常的交流にカメラを向けているのだが、どうもある種の押しつけがましさを感じないではいられない。夫婦がその地に根を張って生きているのは分かるが、カメラに写し出されたとたん、この集落での生活が別格化され、まるで立派でしょ、と言わんばかり。編集され、音楽が流れて美化される農村生活?
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映画評論家
モルモット吉田
田舎暮らしを称賛する映画ではないことはスタッフの顔ぶれでも明らかだが、じっくり腰を据えて撮ることで、自然と農業と生活と文化が重なりあう暮らしと、相互の協力が不可欠な場であることを示す。湯気が立ち込める食卓から圧倒的な食の魅力があふれるが、これ見よがしに食物のアップを挟まないのも良い。エエ声で唄う佐藤さんら地元の有名人もいいが、外部からの移住者を受け入れ、新たな文化が根付き、地元の文化を更に盛り上げる土地らしい開かれた空気が映画にも充満している。
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