ぼくのおじさんの映画専門家レビュー一覧
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評論家
上野昻志
やっぱり、この役は松田龍平以外にないと納得する。怠け者で屁理屈を捏ねる“インテリぼんくら”というキャラは、下手にやると嫌味になる危うさがあるのだが、そこでの力加減が抜群にうまいのだ。たんに世俗に疎くて飄々としているというのではない。俗っ気もありながら、抜けてもいるし、はにかみもある。その辺のあわいを淡々と演じるのは易しいことではない。山下監督も、そのあたりを生かすテンポをよく心得ているようだが、前半、おじさんのキャラを見せていくくだりが、ややダレる。
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映画評論家
上島春彦
松田龍平の「おじさん」演技もその兄一家も良いのに、ハワイに行ったら物語が散漫というかありがちな線に落ち着いてしまい、星を減らした。続篇で「ぼく」の担任女教師戸田とおじさんの恋物語を展開してもらいたい。「ぼく」が恋のキューピッドになるわけね。じゃないと国内キャストがあまりにもったいない。原作が北杜夫というのが意外で、かつ面白い。私の世代だと遠藤周作と並び、北さんが憧れの作家なのにこういう小説を知らなかった。得した気分ではあるがそれ以上ではないかも。
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映画評論家
モルモット吉田
「もらとりあむタマ子」は計算されたゆるさが魅力だったが、今回は最初から脚本や演出までゆるくなっているのではないか。毒気のない予定調和と女優陣の大仰な演技に2時間近く付き合うのは辛い。松田の茫洋とした雰囲気は好ましいが、彼が牛丼屋で紅生姜を取る時に瓶の蓋を下にしたままカウンターに直置きして丼をかきこむので飛沫が瓶に入るとか、哲学者として授業をする割に自室に積まれた本がいつまで経っても紐で縛られたままだったりと細部のゆるさがキャラ造形に繋がらない。
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