夏美のホタルの映画専門家レビュー一覧
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映画評論家
北川れい子
小ギレイな風景と等身大ふうの人物たち。偶然の出会いとささやかなエピソード。観ているこちらは最後まで手持ち無沙汰で、何やら小さなローカル駅でなかなかやって来ない電車を延々と待っているような、もどかしい気分。そういえば本の世界ではライトノベル(ラノベ)が人気だそうだが、それをマネて言えば、本作や「植物図鑑」のようなスケッチ風の映画は、ライトシネマ(ラシネ)とでも言うのかも。薄い話をここまでゆるく長篇化した脚本家たちと監督に逆にカンシンも。
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映画文筆系フリーライター、退役映写技師
千浦僚
もう、良い話や心温まる話が多すぎて飽き飽きしてむしろこちらの気持ちは荒廃しているのだが、なんか本作は良かった。意外と若い女の話であるのと同時に中年男の話だった。年が離れていても女と男であれば常にそこに性的なものがあるのも真理だが、もっと綾と抑制のある父性的な関わりもあると思う。まともなオッサンを演じうる光石研、小林薫が居たおかげでそのことが出せた。手ブレ撮影に疑問も持ったがラストで死者の目線、見守りと了解。撮影花村也寸志、○。
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映画評論家
松崎健夫
夏美はワイドレンズを使って写真を撮っている。それゆえ、被写体とはある一定の距離を置くことで、その場の出来事を一枚の広い画で切り取っている。そして夏美の撮る写真と同じように、この映画のカメラは引きの画でフレームの中の出来事をワンカットで見せようと試みている。夏美がフィルム撮影にこだわるように、小林薫演じる仏師はやり直しのきかない一木造にこだわる。同じように、この映画のカメラもワンカットにこだわる。それが、本作における〈長回し〉の由縁に思えるのだ。
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