ハロルドが笑う その日までの映画専門家レビュー一覧
ハロルドが笑う その日まで
世界最大の家具販売店の創業者誘拐を企む小さな家具店主の珍道中を映し出すコメディー。ノルウェーで40年以上にわたり家具店を営んできたハロルド。ある日、店の隣に突如有名家具チェーン店IKEAがオープン、ハロルドの店は閉店に追い込まれてしまう。監督・脚本は、本作が監督第4作目となるノルウェー出身のグンナル・ヴィケネ。出演は「ラグナロク オーディン神話伝説」のビョルン・スンクェスト、「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」のビヨルン・グラナート、『ビッチハグ』のファンニ・ケッテル。
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映画監督、映画評論
筒井武文
これはイケア批判なのか、それともPRなのか。家具をめぐる二つの価値観を等距離で見つめているところに、この作品の面白さがある。イケアが隣に創業したことで閉店に追い込まれた伝統的な家具店主ハロルドのイケア創業者カンプラード誘拐計画の珍妙さ。それでも思いがけず出会った二人のずれっぷりが、映画を予測困難な展開に導く。彼の息子や共犯者となる女性のキャラも面白く、特にカンプラードの狸おやじぶりは見物。ノルウェーとスウェーデンの差異が判れば、さらに面白そう。
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映画監督
内藤誠
大型チェーン店イケアの進出で、手造り家具店をつぶされ、長年連れ添った愛妻にも先だたれたハロルドがキレまくる出だしは名優ビョルン・スンクェストの独壇場。彼の憎しみのターゲット、イケアの創立者役、ビヨルン・クラナートといい、氷結した湖にまでつかり、北欧のシニアたちは元気がいい。作品中、いくつかの家族の悩み多き事情が出てくるけれども、淡々と笑わせる演出で、観客の想像にまかせているのが巧妙。それにしても、悪口も出てくる物語に撮影を許可したイケアはさすが。
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映画系文筆業
奈々村久生
失業と妻の死というハロルドを襲った不幸の大きさ、彼のやろうとしている復讐の物騒さと、オフビートな語り口や映像のテンションが釣り合っていない。彼の行動自体は行き当たりばったりであっても、悲劇をコメディーにするなら、足し算にしても引き算にしてももっと慎重に計算する必要がある。フィクショナルにしたいのかリアリズムでいきたいのか中途半端なビジョンのまま不用意に他人に銃を向けたり発砲したりするものだから、うかつに笑えないばかりか抵抗すら覚える瞬間も。
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