西部戦線1953の映画専門家レビュー一覧

西部戦線1953

休戦協定が結ばれる直前の朝鮮戦争を背景にした戦争ドラマ。機密文書を紛失した韓国の伝令兵とそれを拾った北朝鮮の若い兵士。故郷に帰るため、二人は任務を果たそうと対決する。監督は「パイレーツ」の脚本を手がけたチョン・ソンイル。突如戦争に駆り出された韓国側の伝令兵を「シルミド」のソル・ギョングが、部隊の中で唯一生き残り戦車を託された北朝鮮兵士を「ファイ 悪魔に育てられた少年」のヨ・ジングが演じる。『韓国映画セレクション2016 SPRING』の1作。
  • 翻訳家

    篠儀直子

    思想も世代も異なる南北の兵士(北朝鮮軍の新兵を演じるのは「ファイ 悪魔に育てられた少年」で注目された俊英ヨ・ジング!)が、敵対しつつへっぽこな戦車に乗って戦場を行くユーモラスなバディ・ムービー。中国軍に出くわすところから爆撃機との対決、さらには橋の上でのくだりなど、誇張されたベタな演技と演出の工夫がはまって相当面白い。でも、コメディ以外の要素も含めて全部載せしたような映画で、バランスが取れていればそれでもいいが、もたつく感じがあるのが相当惜しい。

  • ライター

    平田裕介

    朝鮮戦争版or戦車版「太平洋の地獄」ともいうべき設定とノリかなと思いきや、かなりコミカル。戦車内での放屁を筆頭に、ふたりが何度も繰り返すドタバタした形勢逆転劇はベタだとわかっていても笑わされるし、T-34の走りも軽快、CG過多だが戦闘描写もイケる。それでいて、きちんと同民族の対立を嘆き悲しみ、統一を願って締めくくってもいる。良くも悪くもウェルメイド。それゆえにアガるわけでもなく、ズシンと響くわけでもない。韓国水墨画っぽいポップなOPタイトルは◎。

  • TVプロデューサー

    山口剛

    朝鮮戦争を背景に、戦場で本隊とはぐれ同行を余儀なくされる敵同士、韓国の伝令兵と北朝鮮の新兵、二人の私戦がコミカルに描かれる。「手錠のままの脱獄」のバリエーションとも言えるが、生き物のように動き回るオンボロ戦車をはじめユニークなアイデアに満ちた戦争映画だ。名優ソル・ギョングと若手ヨ・ジングのコンビのいささかオーバーアクト気味の芝居が笑いと涙を誘う。国が分断され敵味方になってはいるが、二人が同じ民族の下級兵士という設定が効いている。

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