バースデーカードの映画専門家レビュー一覧

バースデーカード

宮崎あおいと橋本愛が母娘役で共演する人間ドラマ。紀子の10歳の誕生日に、病魔に侵され余命いくばくもない母・芳恵は、子供たちが20歳になるまで毎年手紙を送ると約束。まもなくして母は他界するが、それから毎年、愛情のこもった芳恵からの手紙が届く。監督は「クジラのいた夏」「キトキト!」の吉田康弘。共演は「日輪の遺産」のユースケ・サンタマリア、「スイートプールサイド」の須賀健太、「東京難民」の中村蒼ほか。
  • 映画評論家

    北川れい子

    試写のときに貰った絵本仕立てのプレス用資料に、母が書き遺した数年分の絵入りのバースデーカードが載っていて、いまあらためてそれを読み返し、娘の成長を見守ることができない母親の思いを実感しているのだが、映画では1年ごとのカードの文面があまり印象に残らない気も。というか、現実のエピソードが文面を追いすぎている。ともあれ、母娘映画として素直な作品だと思うが、息子はもっと幼いのにそっちはほったらかしで、気になる。テレビのクイズ番組のエピソードが邪魔。

  • 映画文筆系フリーライター、退役映写技師

    千浦僚

    またコレも?(「湯を沸かすほど~」評参照)と一瞬思う設定ではあるが、十年続く死後のメッセージ、死別した母との不思議なコミュニケーションというのは面白く、そういうオリジナルさを立ち上げた作り手は偉い。洋画「ある天文学者の恋文」にも通じる、多くの星々の光が実はその星の死滅後に地球に届いていることとのアナロジー。良い話だけでなく亡き母の手紙を桎梏と感じる娘の苛立ちもちゃんとある。編み物する宮﨑あおいの指先は雄弁かつ説得力あり。観られて欲しい映画。

  • 映画評論家

    松崎健夫

    我が人生を変えたと言って過言ではない『WOWOW映画王選手権』での優勝は、近親にハリウッドの映画プロデューサーがいるという講師にかつて英会話を習っていた父から「ハイジの実写映画にチャーリー・シーンが出るらしい」と又聞きした話を瞬時に思い出したことで勝敗が決まった。本作でも主人公は亡き母との思い出をクイズの解答に活かしてゆくが、映像の中では常に風が吹いている。それが「いないはずなのに何かがそこにいる」感じを導き、母不在の意味をも悟らせるのである。

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