エヴォリューションの映画専門家レビュー一覧

エヴォリューション

「エコール」のルシール・アザリロヴィック監督によるダークファンタジー。少年と女性しかいない離島で、母親と暮らす10歳のニコラ。その島ではすべての少年が奇妙な医療行為を受ける。なにかおかしいと気付いたニコラは、夜半に出かける母親の後をつける。出演は、マックス・ブラバン、「白いリボン」のロクサーヌ・デュラン、ジュリー=マリー・パルマンティエ。2015年サン・セバスチャン国際映画祭審査員特別賞・最優秀撮影賞、ストックホルム国際映画祭最優秀撮影賞受賞。
  • 映像演出、映画評論

    荻野洋一

    美少年たちとその母親たちだけが隔離された孤島の暮らしは、デ・キリコの絵画そのままだ。あたりを覆うひんやりとした白々しさはいい雰囲気。だが状況に疑問を抱いた一人の少年が叛乱を試みる展開は、あまり新鮮ではない。風刺SFの形式美にいかに乗れるかだが、視覚的な異端性への依存が強く、映画というよりプログレの長篇PVを見ている印象である。評価はフランス本国よりイギリスでの方がよかったとのこと。ニコラス・ローグの母国ならではの評価ではないか。

  • 脚本家

    北里宇一郎

    冒頭の海中の映像におおっと唸り、少年と女しかいない孤島の設定に惹きつけられて。深夜、女たちが岩礁で繰り広げる饗宴の俯瞰カットなど、あっと驚く感覚の鋭さ。少年にタネ(?)を植え付け、何かをさせるという奇想天外な発想も面白い。これ、直球でやればユニークなSF譚に仕上がるんだろうけど、監督はどうもアートというかカルトを狙ったようで。おかげで中盤以降は変わり映えのしない単調な画面が続く。起承転結の転の入口から、いきなり結に飛んだような展開もゲージツだから?

  • 映画ライター

    中西愛子

    少年と女性しかいない孤島。毎日、奇妙な薬を母に飲まされて暮らす10歳の少年は、ある日、何かがおかしいと気づき始める。セリフはほぼなく、幻想的な美しい映像の力で、種や生命にまつわる秘密が潜む物語を淡々と見せていく。語り口にはまどろっこしさもあって、いま特に驚きを感じるスタイルではないのだが、主人公たちの繊細な心理の変化を心理描写なく伝え切った執念に感服。「エイリアン4」を少し思い起こさせるダークな世界観が興味深い。着地点は想定内ではあるけれど。

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